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米国特許判例紹介:審判請求時における従属クレームに対する議論(第2回)
~形式的な議論では独立クレームと生死を共にする~
In re Lovin, et al.
河野特許事務所 2011年11月7日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(2)審査及び審判請求
審査官はクレーム1-24,30-34を、3つの先行技術に基づき自明であるとして拒絶した。先行技術は以下のとおりである。
先行技術1: U.S. Patent No. 3,712,528 (“Takagi”)
先行技術2: U.S. Patent No. 4,757,932 (“Benn”)
先行技術3:U.S. Patent No. 6,362,456 (“Ludewig”)
審査官の拒絶理由に対し、出願人は独立クレームに関する議論を行ったが、従属クレームに対する別々の議論を行わなかった。審査官は拒絶査定をなしたため、出願人はこれを不服として2008年8月4日、審判部に審判請求書を提出した。
出願人は、別々の小見出しの下に、各クレームをリストアップし、独立クレーム及び従属クレームそれぞれの特許性について言及した。審判請求書においては、独立クレームについては、比較的良く議論されていたが、従属クレームについては形式的な議論でしかなかった。
従属クレームの追加の構成要件に関して出願人は、単に、当該構成要件は先行技術に開示されていないと述べるに留まり、また先行技術の組み合わせに対し非自明であると主張しただけであった。
クレーム11は独立クレーム1の従属クレームであり、
「・・・一のサンプル部分を破壊するステップ」
が追加の構成要件として独立クレーム1に付加されているものである。
出願人の反論内容は以下のとおり。
クレーム11には、3つの先行技術中に対応するステップが開示も示唆もなされていない追加の破壊ステップを有している。しかし拒絶理由通知書においては、従属クレーム11における当該ステップの開示または示唆に関し、審査官は何ら言及していない。
少なくとも当該理由及びクレーム1に関する上述した理由に基づき、3つの先行技術の組み合わせによっては、クレームされた法定主題を想到することができず、クレームされた法定主題は自明でない。
審判部は、3つの先行技術により自明と判断した審査官の独立クレームの拒絶を支持すると共に、従属クレームについても拒絶と判断した審査官の判断を支持した。
審判部は、出願人は単に、従属クレームに記載されていることを指摘しただけであり、適用される引用文献中に、対応するステップの組み合わせが存在しないと主張しただけであると述べた。
そして、審判部は、単に従属クレームがカバーしていることを指摘するだけでは、クレームの別々の特許性に関する実質的な議論とはいえないと述べた。そして、従属クレームに対する実質的議論がないことを理由に、従属クレームは独立クレーム1と生死を共にし、拒絶されると結論づけた[1]。出願人はこれを不服としてCAFCへ控訴した。
3.CAFCでの争点
従属クレームに対する実質的な議論とは何か?
一般に先行技術に対する反論を行う場合、独立クレームについて十分な反論を行い、従属クレームについては簡易な反論で済ますことが多い。この場合、実質的な議論がないとして、従属クレームに対する特許性が十分に審理されないおそれがある。どの程度記載すれば審判部による審理が行われるのかが問題となった。
[1] Ex parte Lovin, No. 2009-007018, slip op. at 4–5 (B.P.A.I. May 19, 2010)
(第3回へ続く)
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