いい家ってなんだ(家造りに立ち向かう心の話)(1) - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

樅木 貞夫
有限会社修景社設計工房 代表取締役
大阪府
建築家
専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

いい家ってなんだ(家造りに立ち向かう心の話)(1)

- good

  1. 住宅・不動産
  2. 住宅設計・構造
  3. 住宅設計・構造設計

「 いい家がほしい 」「 いい家は・・・」 など、いい家の技術論争がさかんですが、ここでは断熱、気密、換気等、または、RCか木造かとか、そういう技術的なことには触れていません。

いい建物ってなんだろう、いい家ってどういうものだろう、という問は建築の設計を志した人なら必ず自問したことです。そして今、家を建てようとされる建築主の方も、既製品の中から選ぶのではなく自分なりの家を造ろうとされる方は、こういう問に行き当たるのではないでしょうか?

ある工務店の方は、家というものは、熱や音を遮断するシェルターであり、その性能が大事だとおっしゃいます。ある建築主のかたは、内外デザインに夢をたくしステキ家を目指します。またある建築主の方は、家に対するこだわりは特に無い、安いのがいい。耐久性が25年でもいい。一生同じ家に住むより、25 年たったら、建てなおしゃいい。と言われます。  設計をする方は、デザインやプラン(平面計画、断面計画)の重要性を説きます。吹抜けがもたらす開放感、窓からの眺めが与える安らぎ、季節の移り変わりや日々のたのしさ等。しかし大きな窓や吹抜けは熱的には不利であり、それを何とかしようとするとコスト に影響する。さりとて、二者択一というようなものでもなさそうに思われます。

ずいぶん以前、ある設計士がある住宅の計画中のこととしておきましょう。その家の奥様が、計画には主導権をもって打ち合わせ窓口となられたのですが、1階に居間、食堂、台所、客間と姑の居室、2階に子供室と夫婦の室、そして2階の廊下の片隅に小さな流しとテーブルを設けた談話コーナー、というのが 初回の要望でした。 設計する立場としては室の使われ方、それに伴う広さ等具体的に確認してゆく、それで設計者として納得できたものを図面化しなけりゃならない。そのときは2 階の談話コーナーの使われ方に疑問があったので打ち合わせすると、子供との、寝る前のいこいのスペースとのこと。姑さんもおられることだし、・・プライバ シーに2段階程度考えるならそういうこと もあるな。・・・・と思いつつ、それなりに進めていったのですが、この部分が打ち合わせの度に機能が拡張されてゆく。TVが追加され、冷蔵庫も、ソファも 大きく なってゆく。1階の居間と同じ立派なLDKになってしまう。

どうも、奥さんと姑さんの見えざる関係がこういう打ち合わせ結果になって顕れてしまったようです。分離したい気持ちとしての2階の居間と、全てを包含してゆく1階の居間の、2つの意志が折り合うことなく並存する。こういう時、これをこ のまま進めるか、もう一度洗いなおすかは難しい問題です。言われたとおりのものをそれなりにデザイ ンでカバーしてしまうことも可能ですが、疑問点を放置しておくと、あとで揺り戻しがかかり作業が無駄になる恐れはあると思われます。そこは設計業務上の問題なのでここでは深く触れませんが、理想を申し上げれば、家族が適当な距離を保ちながら、お互いを尊重しつつ行われる生活があり、家はそれを包み込む器でありたいところ。しかし、そんな理想的な家族なんてありはしない。それをあいまいにしたまま、日々グチりながら生きている。それはそれで安定してい たのに、家を建てるという行為が、あいまいにしてきたものを具体化してしまうこともある。(その点、商品化された家は、そのあたりを放置したまま、うまく通過してゆくこともできます。これは、裏をかえせば商品として必須のことなのかもしれません。)いい家つくりとは、これをどう扱うべきでしょう?

家のことは妻にまかせている。住宅の設計打合わせも同じで、わしゃ口出さん。ということで、せっかく家族にとっての一大イベントが主婦の孤独な作業 になってしまうこともあります。一方、ご夫婦で打ち合わせすることによって、かえって価値観の違いがはっきりしてしまうこともあります。いずれも私たち設 計の立場からはあまり立ち入れることではありませんが。

どこかのコマーシャルにもあったわがまま住宅というわけで、あれこれ要望を盛り込みすぎて、施工者や設計者が経済活動として処理できなくなるケースも ありますし、かといって、センスのいい建築家だからとまかせきりになったのでもうまくいかない。どう対処すればいいのだろう、なんらかのバランス点という ものがあるのだろうか?それはだれにでも当てはまる一般解なのだろうか?そうでなければ初めて家を造るときはだれでも迷いの中から歩き出し、足のむくまま 気のむくまま、あとは運まかせとしかならないのだろうか?

いい家とはなにかという問の前に、家とは何かという問のほうが本質的なように思われます。

今回はここまでにして、次回、あくまで個人的な解釈ですが、書いてゆきます。


このコラムに類似したコラム

竣工体感会レポート2~先輩・建て主さん~ 山道 勉 - 建築家(2011/09/30 14:00)

マジック~包み込む居心地のなかで 山道 勉 - 建築家(2011/06/04 13:37)

【地震“とか”にメチャクチャ強い家って?】 須永 豪 - 建築家(2015/12/10 11:09)

戦後日本住宅伝説 岩間 隆司 - 建築家(2014/07/25 10:19)