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河野 英仁
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米国特許判例紹介:ソフトウェア特許に対する権利侵害(第5回)

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米国特許判例紹介:ソフトウェア特許に対する権利侵害(第5回) 

~ソフトウェアモジュールがロックされている場合に侵害が成立するか~

河野特許事務所 2011年3月25日 執筆者:弁理士  河野 英仁

             Finjan, Inc.,
                   Plaintiff-Cross Appellant,
                 v.
    Secure Computing Corporation, et al.,
                   Defendants Appellants.

(2)ACCO事件[1]

  参考図2はACCO事件において問題となったロック装置を示す説明図である。ACCO事件で問題となった装置クレームは、盗難防止用のロック装置を権利化している。

 

参考図2 ACCO事件において問題となったロック装置を示す説明図

 

 問題となった特許は、特殊な配置ピン60を、セキュリティスロット72を通じて突出させロックする装置である。イ号装置は2つのモードのいずれかにおいて操作でき、一方は侵害(侵害モード)、他方は非侵害(非侵害モード)となる。ACCO事件においてCAFCは侵害モードにて現実に誰かが実施したという証拠がないことから直接侵害は成立しないと判断した。

 

 本事件において被告はACCO事件を引用し、少しでも非侵害モードにて被告ソフトウェア製品が使用されうるのであれば、直接侵害は成立しないと主張した。

 

 CAFCは、ACCO事件は特殊な配置が必要となるピンを必要とする点で、何ら特殊な配置が必要とされない事前スキャンモジュールとは相違すると述べた。

 

(3)直接侵害の成立

 被告は、事前スキャン用プログラムコードが全ての被告製品に「完全に存在する」ということを認めている。また原告側証人のGallagher氏は、ソフトウェアモジュールがオフにされたとしても、モジュールは製品内のバイナリソースコードに存在すると証言した。

 

 CAFCは、クレームされた機能を実行するためのソフトウェアは販売時に被告製品に存在するということは疑いがなく、これは、自動車が停止している間も、自動車を推進するエンジンが車体に存在することと同様であると述べた。

 

 CAFCは、Fantasy Sports事件[2]を挙げた。Fantasy事件において、特許はフットボールを仮想空間にてプレイするためのコンピュータをクレームしていた。イ号製品において、特許の機能を利用するためにはユーザがオプションによりソフトウェアの一部分にプログラムされた機能をアクティベートしなければならない。被告はアクティベートした場合にのみ侵害が成立すると主張したが、CAFCはこれを否定し、侵害が成立すると述べた。

 

 なぜなら当該コード自体を、ユーザに変更させる必要はなく、単にアクティベートさせるだけで、ユーザに特許の機能を活用させるためのコードが被告製品中に記述されているからである。

 

 CAFCはFantasy事件における考えは本事件にも適用できると述べた。問題となった事前スキャンモジュールは販売時に被告製品内に“既に存在する”。そして、ユーザがソフトウェアモジュールをアンロックするために、内在するコードを変更する必要はない

 

 キーを購入することにより「プログラムされた機能を有効化すること」が必要であったとしても、被告製品のクレームに対応するコード自体を何ら変更するものでもない。以上のことからCAFCはシステムクレーム及び記録媒体クレームに対する直接侵害を認めた。

 


[1] ACCO Brands, Inc. v. ABA Locks Mfr. Co., 501 F.3d 1307, 1313 (Fed. Cir. 2007).

[2] Fantasy Sports Props. v. Sportsline.com, Inc., 287 F.3d 1108, 1118 (Fed. Cir. 2002).

(第6回へ続く)

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