米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(8)(1回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(8)(1回)

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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(8)(第1回)

~先行技術要素の組み合わせと後知恵~

米国特許判例紹介 

In re Richard F. Schwemberger

河野特許事務所 2011年2月8日 執筆者:弁理士 河野 英仁

1.概要

 KSR最高裁判決[1]においては、TSMテスト[2]を前提とする厳格ルールから、常識(Common Sense)を含め技術分野において公知の事項及び先行特許で言及されたあらゆる必要性または問題もが、組み合わせのための根拠となるフレキシブルアプローチへと自明性の判断が変更された。

 KSR最高裁判決後、数多くの事件において自明か否かの判断事例が蓄積された。米国特許商標庁(以下、USPTOという)は、CAFCにて判示された代表的な事例を厳選し、新たなガイドライン(以下、2010KSRガイドライン)を、2010年9月1日付で発表[3]した。

 2010KSRガイドラインにおいては、「予期できる結果を奏するために、公知の方法に従い先行技術を組み合わせたにすぎない」事例を紹介している。本事件においても同様に、発明の構成要件の一部が第1先行技術文献に記載されていないが、第2先行技術文献に開示されており、組み合わせにより容易といえるか否かが争点となった。

 CAFCは、効果は予期できるものであり、クレームに係る発明は公知の要素を組み合わせたに過ぎず自明であると結論づけた。

 


[1] KSR Int’l Co. v. Teleflex, Inc., 127 S. Ct. 1727, 1742 (2007)、550 U.S. 398, 82 USPQ2d 1385 (2007)、詳細は以下を参照。
http://www.knpt.com/contents/cafc/2007.05/2007.05.htm

[2] TSMテスト:教示(Teaching)-示唆(Suggestion)-動機(Motivation)テストの略である。先行技術の記載に重きを置き、ここに当業者がこれらを組み合わせるための教示、示唆または動機が存在する場合に、自明であると判断する手法である。Al-Site Corp. v. VSI Int’l, Inc., 174 F. 3d 1308, 1323 (CA Fed. 1999)。なお、TSMテスト自体は依然として有効である。

[3] 2010KSR GuidelineはUSPTOのHPからダウンロードできる。

http://edocket.access.gpo.gov/2010/pdf/2010-21646.pdf

概要は、http://www.knpt.com/contents/cafc/2010.1101/2010.1101.pdf

を参照されたい。

                                  (第2回へ続く)

 
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