第2章 「カーキ色」は何色か? - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第2章 「カーキ色」は何色か?

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連載「刑事法廷」
第4回

 1975年の夏から東京高等裁判所で始まった控訴審の公判では、新たに弁護人が申請した証拠物である上着2着が証拠として採用されました。この2着の上着はSが事件当夜着用していた上着(上着?とする)と、一審法廷でM巡査が指さして乙が着ていたものと同じ色であると証言した上着(上着?とする)とでした。
 これまで述べてきたように、M巡査は乙の上着が「カーキ」色だった、Sが乙だと思った根拠の一つはSも同じ「カーキ」色の上着を着ていたことだと供述してきました。そうだとすると、上着?も上着?もカーキ色であるはずです。
 ところが、上着?は確かにカーキ色、すなわち「黄色に淡い茶色の混じった色」でしたが、上着?はなんと濃緑色だったのです。
 この点について控訴審でM巡査に証言を求めると、M巡査は、自分が述べてきた「カーキ色」とは紺色もしくは濃緑色のことを意味しており、黄茶色系統の色とは違う、と証言したのです。
 つまり、M巡査に暴行を加えた乙の上着の色と、事件当夜Sが着ていた上着の色は違ったのです。これにはさすがの検察官も、M巡査の誤解を否定しようがなくなってしまいました。私はこの時点で勝負あったと確信しました。


                (次回に続く)