第2章 「カーキ色」は何色か? - 民事事件 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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第2章 「カーキ色」は何色か?

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  1. 暮らしと法律
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連載「刑事法廷」
第3回

 このような審理を経て一審判決が言い渡されましたが、結果は有罪で、懲役8月、執行猶予3年というものでした。裁判官は、Tはできるだけ正確な供述をするよう努めていることがうかがわれるので証言は信用できる、その証言に照らすと被告人の供述は信用できない、Tの証言は全体としてM巡査の証言の信用性を担保するのに十分である、として被告人を有罪としたのです。
 法廷でこの判決の言い渡しを聞きながら、Sが苦笑いをしていたのを私は今でも鮮明に記憶しています。学生運動家のSは、日本の司法制度や裁判所を基本的に信用してはいませんでした。私たち弁護人が無罪を主張して一生懸命に活動しているのを冷めた目で見ていたSとしては、「ほらね、やっぱりムダだったでしょう」という心境だったのでしょう。
 こんなSは初め、控訴をすることについて否定的でした。しかし私たち弁護人としてはこの判決はとても承服できるものではありませんでした。控訴しないということは結果的にはこの判決を認めることを意味するが、それはたとえ反体制の信念をもつ者としても採るべき態度ではないのではないか、とSを説得し、ようやく納得してもらって控訴をすることにしました。


                  (次回へ続く)