- 小形 徹
- 小形 徹 * 小形 祐美子 +プロスペクトコッテージ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
< リフォームで再発見する、心地よさ >
この部屋に入ると何故かとてもすがすがしい気持ちになる。
窓のブラインド越しに入ってくる光はとてもやさしい。
その光は時間と共にゆったりと移り変わっていく。
気持ちがすーっと軽くなり、広がっていく。
築35年以上経ったRC造5階建て建物の4階部分のリフォームである。
床・壁・天井を全部取り除いて構造体までを現しにして改修(スケルトンリフォーム)し、
水周り(キッチン・浴室・トイレ)も移設した。リフォーム前の、暗く細かく仕切られ
圧迫感が漂っていた部屋は、明るく広々とした気持ちの良い空間になった。
建主は50代の女性とその家族。子供たちは大学生であり、夫も忙しい。
自身も様々な仕事を忙しく行いつつ、親の世話や家事をこなす。
そんな彼女にとって、リフォーム前の家は心を落ち着ける場所というよりも戦いの場であった。
気持ちの前に立ちはだかる壁のような・・・。
リフォームの目的は、古くて狭い設備の更新や、
生活スタイルと合わない間取りの改善であったのだが、
本当は「心を開放すること」であったような気がする。
リフォームが完成してしばらくの間、建主はここに荷物を運び込もうとせず、
ひとり静かな時間を過ごしていたという。この話を後日聞いて、そんなことを思った。
家のリフォームは、建主の、そしてその家族の気持ちを更新する。
それは、これまで気がつかなかったような驚きや喜び、
そして<心地よさ>を再発見するプロセスなのかもしれない。
(写真上:リフォーム後 写真下:リフォーム前)
大田区山王 H 邸 / スケルトンリフォーム / RC造5階建て建物の4階部分
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