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〜実用新型特許権の有効活用〜(第1回)
河野特許事務所 2009年2月1日 執筆者:弁理士 河野 英仁
泉株式会社(日本)
原告-被上訴人
v.
広州美視有限公司等
被告-上訴人
1.概要
実用新型(日本の実用新案に相当する)は中国において発明創造の一つとして出願でき、(専利法第2条*1)、実質審査を経ることなく、実用新型特許が成立する(専利法第35条)。
日本においても実用新案は無審査で登録されるが(実用新案法第14条第2項)、実用新案権に基づく権利行使の際に、実用新案技術評価書の提出が必要とされる(実用新案法第29条の2*2)。さらに実用新案技術評価書を提示して権利行使したとしても、当該実用新案権が無効となった場合は、被告に与えた損害を逆に実用新案権者が負うことになる(実用新案法第29条の3*3)。
以上の理由により、日本では実用新案による権利化・権利行使のニーズは著しく低下しているが、中国においては逆に有効活用されている。実用新型に基づく特許出願件数は、2008年度で約22万件*4と極めて多く、また人民法院が第1審として受理した実用新型特許侵害事件は2008年度で約1600件にも達している*5。日本における知的財産関係民事事件全体の第1審受理件数が2008年度では500件以下であることからすれば*6、中国での実用新型特許制度自体が如何に権利創出・権利行使の両面で有効に機能しているかが理解できる。
本事件においては、原告は実用新型特許に基づく特許権侵害を主張し、北京市第一中級人民法院へ提訴した。北京市第一中級人民法院は原告の訴えを認めた*7。被告はこれを不服として北京市高級人民法院へ上訴したが、北京市高級人民法院は、後に無効とされた一部の請求項を除いて、特許権侵害を認める判決をなした*8。
(第2回へ続く)
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