また酒は眠気を催すことから寝酒として飲む人も目立ちますが、往々にして逆に睡眠の妨げとなります。過度のアルコールは脳機能を麻痺させるため入眠は比較的スムーズですが、アルコールが分解される夜半過ぎに覚醒してしまい、その後は眠れなくなるケースが多いようです。
アルコールはまた注意力や集中力を散漫にし、交通事故や業務上の重大ミスなどに直結します。飲酒しての車の運転や危険を伴う業務の遂行は厳に慎まなければなりません。日常的にも飲酒後の仕事や作業、学習は効率が低下し、ミスも出やすくなります。
さらに厄介なことにアルコールには「耐性」と「依存性」があります。酒を飲み慣れてくると、少量の酒だけでは足りなくなり、もっと多くの酒を飲みたくなります。アルコールを分解する酵素が誘導され分解が進むためです。気をつけないと、どんどん酒量が増えていってしまいます。
そして次第に、酒に心理的に頼るようになってしまいます。酒無しでは緊張やストレスが解けず、次第に眠れなくなり、さらには手が震えたり冷や汗が出るようになっていきます。そうなると酒から離れるのは大変困難で、その前に手を打たなくてはなりません。
酒に依存する人というのは何かストレスや不満、自己不一致感などの心理的トラブルを抱えていて、それを解消しようとして酒に手を出している例が目立ちますが、飲酒への傾倒はトラブルの解決に寄与するどころか、結果的にトラブルの芽を拡大させてしまっているのです。
過度の飲酒は家庭生活にもトラブルを持ち込みます。酒が廻って不機嫌な状態で帰宅する日々が続けば、夫婦仲や子供との関係が悪化し、最悪の場合には離婚や子供の家出、非行などを招きます。また酔った勢いでセクハラや性的問題を引き起こす困った男性も後を絶ちません。
ビジネスの世界でも、アルコールが原因で大事な仕事を棒に振ったり、顧客や取り引き先の信頼を失う人が数多くいます。最悪の場合には職やキャリアを失ったり、訴訟の憂き目に合う可能性もあるのです・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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