それに加えて睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、身体の成長や疲労の回復、外傷の治癒にも役立っています。また充分な睡眠は免疫システムを強化し、風邪や各種感染症の予防や悪化防止に欠かせないものとなっています。風邪をひいたらよく寝る、というのは理に適っているのです。
生体には恒常性を維持する仕組みがあり、これは睡眠も例外ではありません。覚醒している時間が長いと睡眠を促す物質が分泌され睡眠を誘発します。前の晩よく寝ていなければ眠くなる、という現象です。それに素直に従っていれば、本来は睡眠不足にはならないはずです。
その一方で「体内時計」というものが存在し、睡眠に一定の規則性をもたせています。脳の視床下部の中に視交叉上核という中枢があり、ここに約1日周期で睡眠と覚醒を繰り返すリズムを刻む体内時計が内臓されているのです。このリズムを「サーカディアンリズム」といいます。
また脳の視床後部には松果体という内分泌器官があり、メラトニンというホルモンが分泌されています。メラトニンは体内時計の働きによって外が明るいうちには産生されず、夕方から夜間にかけて多く産生され睡眠を誘発します。そのために昼は起きて夜は寝るというパターンが成立します。
睡眠中にもレム睡眠とノンレム睡眠という独自のリズムがあり、約90分周期で繰り返されています。レム(REM)とは急速眼球運動のことで、脳の覚醒に向けた準備の役割りがある浅い睡眠です。一方のノンレム睡眠は眼球を動かさない深い睡眠ですが、4つの深さに分類されます。
眠り始めて直ぐの第1周期や第2周期は深いノンレム睡眠が集中し、いわゆる熟睡になります。第3、第4周期になると比較的浅いノンレム睡眠になり、覚醒に向けた準備に入ります。「寝入りばな」に泥のように眠るというのは、そのような仕組みによるのです・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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