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河野 英仁
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米国:均等論陥れ防御とKSR最高裁判決後の自明性判断6

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米国特許判例紹介:均等論陥れ防御とKSR最高裁判決後の自明性判断
      〜KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(5)〜(第6回) 
   河野特許事務所 2009年9月3日 執筆者:弁理士  河野 英仁

               Depuy Spine, Inc., et al.,
              Plaintiff-Cross Appellant,
                    v.
              Medtronic Sofamor Danek, Inc., et al.,
              Defendants-Appellants.

 
 これに対し、Andersonは圧縮部材を開示している。図6はAndersonに開示された固定用留め具の断面を示す断面図である。



図6 Andersonに開示された固定用留め具の断面を示す断面図


 Andersonが開示する固定用留め具は、腕または脚等の長い骨を固定する為の装置である。スクリュー19の締め付けにより、ブロック20及びロッド8が下方向に移動する。ロッド8は圧縮部材15,15’を介してボール14及びボルトシャンク13を下側へ押し込む。スクリュー19の締め付けにより、ボール14は圧縮部材15,15’により強固に固定される。

 被告はAndersonに開示された圧縮部材15,15’をPunoのスクリューヘッド30上に組み合わせるのは自明であると主張した。

 CAFCは、PunoはAndersonの圧縮部材を組み込むことをTeach Awayしており、自明でないと判断した。KSR最高裁判決においては、
公知の方法に係るありふれた構成要件の組み合わせは、予見できない効果を奏さない限り、自明である。
と判示された。その上でCAFCは、
先行技術が組み合わせのための阻害要因となる場合、自明でない。*8
と述べた。


 複数の先行技術を組み合わせてクレームに係る発明に想到するためには、当業者が、これら先行技術を組み合わせるための理由付けが必要となる。この理由付けが弱い場合、Teach Away、つまり阻害要因が発生しているといえ自明と結論づけることはできない。

 本件において、Andersonの圧縮部材をPunoの器具へ追加することは、Punoの器具が目的とする「衝撃吸収効果」を低減または除去することになる。つまり、圧縮部材を仮に採用した場合、器具を介して骨へ直接衝撃が加わり、器具と骨との融合に失敗する可能性がある。以上のことからCAFCは組み合わせのための阻害要因が存在することから、自明でないと判断した。

 続いて、CAFCはGraham最高裁判決*9において判示された2次的考察について検討した。2次的考察とは、自明性の判断において副次的に用いられるものであり、以下の事項を検討する。
商業的成功
長期間未解決であった必要性
他人の失敗
模倣等

 CAFCは本事件において、「被告の失敗」及び「模倣」を認定し、本件特許の非自明性をより確固たるものとした。被告は678特許の出願前にスクリューを設計していた。被告はスクリューヘッドに対する圧力を付与するために、圧縮部材ではなくロッドを用いていた。ロッドでは強固にスクリューヘッドを保持することができないため、被告の開発チームは他の解決方法を模索していた。

 そして678特許が登録された後、被告の開発チームは突如方向性を変え、ロッドとスクリューヘッドとの間に圧縮部材を挿入する設計を採用した。そしてこの製品がイ号製品である「Vertex(登録商標)」となったのである。CAFCは以上のことから、自明性の判断にあたり、他人の失敗及び模倣が存在したと認定した。

 CAFCは以上述べたとおり、先行技術の組み合わせに関する阻害要因、他人の失敗及び模倣行為等を総合的に勘案し、仮想クレームは自明でないと判断した。そして陥れ防御を否定し、均等論上の侵害を認めた。


5.結論
 CAFCは、仮想クレームが自明でないことから陥れ防御を否定した地裁の判断を支持する判決をなした。
                                                    (第7回へ続く)

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