この教則本で目標とすることは「自分で譜読みができるようになること」である、と考えます。
導入から両手奏を習得する
この教本では、最初から両手奏です。また、左手はヘ音記号で、
右手は「中央ハ」の音の習得から入ります。
ただし、導入の教本ということで、左手の伴奏は「1音のみ」(ほたるをのぞく)となっています。
この配慮により子供たちは、楽に伴奏をつけることができ、
さらに右手はメロディーに集中できるようになっています。
呉暁先生による素敵な詞と曲
また、ほとんどが呉暁先生の詞と曲となっています。
これは、歌って弾けるように、言葉と音の流れを一致させたり、
作曲の上で、歌いやすいような配慮をしています。
ほのぼのとした大杜玲子さんのイラストも素敵ですね。
テクニック的要素も考慮されている
また「3度のれんしゅう」「3度のうごき」などのテクニックの練習、
「おんかい」の練習もあり、テクニック的な要素も視野にいれています。
呉暁さんの「ひとことコメント」もユーモアがあって面白いです。
(例:わたしは、ポテトチップがだいすきですが、ふとるから、がまんしているのです)
この教本のエッセンス
呉暁先生ご自身による「この本の使い方」から、教本のエッセンスを要約してみます。
■生徒が自分で音符を読み、旋律をドレミで歌わせる
■音符を読まないで指番号をたよりに弾かないように、あまり書き込まないように、指使いの数字を出来るだけ少なくしている
■テクニックの練習は「これ、弾けるかな」など、「遊び」のように楽しんでやること
■両手で弾くことが精一杯の段階では、指の形についてはあまり指摘せず左右の手の動きを習得することへ注意を向ける。両手の運動神経がつながってきた時点で、少しずつ指先の使い方を指摘すれば、しっかりした音を出せるようになる
■ソルフェージュの教材を使い、ピアノと別に譜読みをやらせることがピアノの上達の決め手である
■「アキ ピアノ教本」をメインに、譜読みとテクニックをつけさせ、一方で少しだけ難しい曲を併用すると良い
■難しいものを弾けても、読譜力がないという生徒のために、「アキ ピアノ教本」を「初見の練習」として与えるのも良い
■この教本が終わったら、バルトークの「ミクロコスモス1」に進むことができる
■指導法については、「ソルフェージュからピアノへ」「ピアノの上達はソルフェージュから」「練習しないで上達する導入期のピアノ指導」を参考にすることをおすすめする
呉暁先生の教本を見ていつも思いますが、先生の教本は実にシンプルですね。
シンプルかつ、機能的でムダがない。
このことは、子どもたちの視覚的なストレスを最小限に抑えることを可能にしていると思います。
呉先生の長年のピアノ教育によって完成されたこの一連の教本は、
確実な進歩が望めるようにシステム化された素晴らしい教本だ、と思います。
※私の活動に関してはピアノ教室コンサルタントのページからご覧下さい。
※現在、ピアノ教室運営のエッセンスをメールマガジン「成功するピアノ教室」にて執筆中です。