廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-5 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2016年12月07日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-5

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進(第5回目)




 ※関連記事
 (第1回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
 (第2回目)「経理的基礎」ってなに?
 (第3回目)行政監視の動向とその影響について
 (第4回目)欠格要件とは
 (第6回目)優良性評価制度とは
 (第7回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
 

 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進」に関して検討されているポイントは以下の4点です。
・「経理的基礎」などの許可基準を明確にするべき
・行政は不適正処理への取締りをもっと徹底するべき
・欠格要件の見直しや、産業廃棄物収集運搬業許可手続の簡素化等、一定の合理化をするべき
・信頼できる産業廃棄物処理業者を育成する観点から、優良性評価制度を拡充していくべき


 今回のコラムでは、「収集運搬業許可手続の簡素化」について解説します。


実現するか?収集運搬業許可手続の簡素化




 現在の廃棄物処理法では、産業廃棄物収集運搬業を営みたい場合は、産業廃棄物を「積み込む場所」と「下ろす場所」の両方の自治体の許可を取る必要があります。

 例えば、大阪府の産業廃棄物を京都府に運搬する場合は、大阪府知事と京都府知事の両方の許可が必要となります。

 例のように、A県とB県の間だけで運搬する場合ならわかりやすいのですが、廃棄物処理業の場合は、都道府県知事以外にも「保健所政令市長」も許可権限を持っています。

 そのため、大阪府枚方市から大阪市北区に産業廃棄物を運搬する場合は、同じ大阪府内での運搬ですが、大阪府知事と大阪市長の両方の許可が必要になります。

 言わば、大阪市などの保健所政令市は、バチカン市国のように、大阪府にありながら独立した行政権限を有しているわけです。

 そのため、仮に日本全国各地でくまなく産業廃棄物の収集運搬業を行いたい場合は、各都道府県以外にも、保健所政令市からも許可を取得する必要があります。

 その数をすべて合計すると、なんと「109」自治体に上ります!

 ちなみに、新規許可の場合、1つの自治体当たり81,000円の審査手数料が必要ですので、それだけでも「8,829,000円」の経費がかかります。

 申請先への交通費や人件費を考えると、1千万円以上の経費が必要になります!!


 この点を「無用な規制だ」と問題視し、申請先の自治体をもっと減らして欲しいという意見が、処理業界と経済界の両方から出ています。


 専門委員会では、規制緩和の方策として、下記の5案を示しています
1案 都道府県ではなく、国が許可する
2案 政令市ではなく、都道府県が許可する
3案 主たる事務所の所在地を管轄する都道府県等が許可する
4案 積込み地又は取卸し地のいずれかの地を管轄する都道府県等の許可を不要とする
5案 現行制度の下で実質的な手続負担軽減策を拡充する


 現実的に考えると、第5案以外は実現不可能です。
 その理由は
1案 国に許可権限を一本化する場合、環境省の人員を数100人単位で増員する必要がある
2案 都道府県に一本化する場合、政令市に業者に関する情報がいかないこととなり、円滑な規制・監視を期待できなくなる
3案 東京などの大都市を擁する自治体のみに申請が集中し、地方都市には業者に関する情報がいかなくなる
4案 3案と同様、申請に便利な自治体のみに情報が集中し、廃棄物が流入する自治体には情報がいかなくなる


 1案から4案までは、いずれも「地方分権」に逆行する「改悪」であり、人員や予算面を考慮すると、現実的には実現不可能な案です。

 ただ、2案から4案までは、いずれも各自治体間で業者情報の共有ができるシステムがあれば、許可申請のシステムとしては採用できるものになるかもしれません。

 しかし、その場合でも、申請が集中する自治体と、情報のみを利用する自治体の間で不公平が生じますので、3案や4案の場合は、やはり現実的には採用が難しいでしょう。

 情報共有のシステムを構築するという前提であれば、将来において、2案がもっとも実現可能性が高い案とも言えますが、これはあくまでも仮定の話です。


 現在の状況下では、1案から4案はすべて実現不可能です。

 そのため、5案を中心に改善を進めるしかないのですが、これも各自治体ごとの個別事情により、それほど改善が進んでいないのが現実です。


 結論をまとめると
 収集運搬業の許可申請手続の大幅な簡素化は望み薄。
 改善があるとすれば、添付書類の一部省略など、小幅な改善しか望めないでしょう。
 となります。 


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 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」