- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
コミュニケーションの失敗事例から見る手続きのポイント(第4回目)
廃棄物処理施設設置許可申請の留意点(1)
廃棄物処理施設設置許可申請の留意点(2)
廃棄物処理施設設置許可申請の留意点(3)
の続きです。
今回は、「地元市長、あるいは地元住民の懸念にどう応えていくか」についてです。
「リスクコミュニケーション」とは
産業廃棄物処理施設の設置に関するリスクコミュニケーションとは、「事業者」、「行政」、「地元住民」が廃棄物処理施設に関する情報を共有し、それをその地域に設置することを合意するまでの一連のコミュニケーションのことです。
具体的には、「排水の方法」「有害物質含有の有無」「地下水汚染防止の方法」など、周辺の環境を汚染する可能性があるリスクを上記の三者で情報共有し、廃棄物処理施設が設置されることによって受忍できる範囲を取り決めることになります。
産業廃棄物最終処分場の設置で想定されるリスク
産業廃棄物最終処分場(今回は、管理型の最終処分場を例とします)の設置によって想定される、環境保全上のリスクは
1.排水による水質汚染
2.浸透水による地下水汚染
3.土壌汚染
などとなります。
上記の具体的なリスク発生を防止するため、最終処分場は日々厳重に維持管理される必要があります。
また、埋められた廃棄物が無害になるまで何年もかかりますので、最終処分場の閉鎖後も、周囲の環境を汚染していないかどうかを管理し続ける必要があります。
その長年にわたる維持管理の担保として、最終処分場の設置者には、「維持管理積立金」を積み立てる義務があります。
最終処分場の管理のポイントは
1.浸透水(最終処分場に浸透した雨水など)を地下に浸透させない措置
通常は、遮水シートを二重に設置する遮水工を施工します
2.浸透水や保有水を集排水管で集め、安全に放流することができるレベルになるまで、排水処理施設で浄化すること
などになります。
その他、埋立地内から発生するガスの対策等も必要ですが、もっとも大きなポイントは、上記の2点です。
水源地や農地が近くにある場合は、通常の管理方法以上に厳格に排水管理をする必要が生じることがあります。
リスクコミュニケーションは、「正確な情報」と、「関係者相互の歩み寄りの姿勢」が重要です。
事業者側の姿勢としては、住民の方に納得していただけるまで、何度も説明にうかがうという誠実な対応が求められています。