公訴時効その1(1) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

閲覧数順 2024年04月26日更新

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公訴時効その1(1)

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連載「新・刑事法廷」

刑事事件と時効



 このシリーズの「30年前の殺人事件と除斥期間」では、民事事件における時効と除斥期間の問題を取り上げましたが、それでは刑事事件ではどうなのでしょうか。

 その30年以上前の殺人事件では、犯人は事件から26年が過ぎた2004年(平成16年)に自首しましたが、殺人罪の時効(当時は15年)が成立していたため、逮捕も起訴もされずに終わりました。

このように、民事だけでなく刑事事件でも時効制度が存在しています。この場合は公訴時効といって、事件の時から一定期間が経過すると起訴(公訴の提起)ができないというものです。起訴できない以上、たとえ犯人が明らかであっても逮捕もできません。警察が事件の真相を明らかにするため、在宅取り調べなどのいわゆる任意捜査をすることは許されますが、それが限度です。


公訴時効



 民事事件における時効や除斥期間についてと同様に、刑事事件にもこのような公訴時効が存在する理由については、学者によれば、長期間の経過により証拠が散逸して真実解明が難しくなることや、被害者や遺族の被害感情が薄れること、犯人の側にも一定の社会生活が継続することによって家族などの利害関係を持つ者が存在することなどが上げられています。

しかし、最近、犯罪被害者遺族の団体などから公訴時効の撤廃を要求する声が強く上がり、法務省も公訴時効制度について大幅な見直しを検討しているとのことです。被害者や遺族としては、たとえ何年経とうが被害感情が薄れることはないし、DNA鑑定のように科学技術の発達によって何年後でも犯人と断定する確実な証拠が得られるようになったこと等が撤廃の理由とされています。

 確かに、たとえ20年や30年も前の事件であったとしても、殺人などの凶悪事件の犯人が、逮捕も処罰もされずに大手を振って社会で生活することを被害者や遺族が許せないと感じるのは良く理解できます。そういう意味で、公訴時効の撤廃を求める被害者や遺族の方々の感情はある意味で当然のことと思います。

しかし、問題はそれだけでは終わりません。