30年前の殺人事件と除斥期間(2) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

羽柴 駿
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閲覧数順 2016年12月05日更新

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30年前の殺人事件と除斥期間(2)

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連載「新・刑事法廷」

最高裁判決



 今回の損害賠償請求訴訟の第一審判決は、この除斥期間の適用を認め、遺族による損害賠償請求を認めませんでした。しかし二審判決は除斥期間の適用を認めずに犯人に対し損害賠償を命じました。

犯人側の上告に対し最高裁は二審判決を適法と認め、上告を棄却したのですが、その理由として、被害者の死亡を遺族が知り得ない状況をことさら作り出した犯人が、それ故に賠償義務を免れるとするのは著しく正義公平に反するとしています。

 実は、除斥期間の適用を最高裁が認めなかったケースは以前にもあります。国が実施した予防接種により心身に障害を負った被害者らが国を相手に損害賠償を請求した訴訟で、最高裁は平成10年に言い渡した判決で、同じような理由で除斥期間の適用を認めませんでした。今回の判決も、予防接種事件と同様に事件の特異性を考慮して被害の救済を図ったものと評価されています。

 確かに今回の事件は、犯人が遺体を隠し続けたために犯行そのものが長期間明らかにされなかったという特殊な事件であり、犯人自身も自首して罪を認めているので、誤審の心配もありません。条文を杓子定規に適用するよりも被害の救済を優先させたことは妥当といえるでしょう。


公訴時効は?



 今回の事件では、犯人は事件から26年が過ぎた2004年(平成16年)に自首し、そこで初めて殺人事件の存在が明るみに出ました。しかし、殺人罪の公訴時効(当時は15年)が成立していたため、起訴されずに終わりました。

なぜ極悪非道の殺人犯人を時効で許してしまうのか。遺族の方々が損害賠償請求訴訟を起こしたのにそのような感情が根本にあることは、容易に理解できます。

 それでは刑事事件のほうも時効で済ませるのではなく、何十年経っても処罰すべきなのでしょうか? 最近、犯罪被害者遺族の団体などから公訴時効の撤廃を要求する声が強く上がり、法務省も公訴時効制度について大幅な見直しを検討しているとのことです。

 私は、遺族の方々の感情は当然のことと思いますが、他方で、公訴時効の撤廃には危惧を覚えます。そのことは次回にお話したいと思います。