その一 クライアント企業の組織上の課題を克服し、なおかつ個々の社員を健康な状態にすることによって、企業の活力を向上させる支援
その二 クライアント企業の提供する商品・サービスの「健康」に関する要素を検証・助言し、企業の業績向上に寄与する支援
その三 病院などの医療機関に対し、組織上の課題を克服し、なおかつ個々の職員を健康な状態にすることによって、医療機関の活力を向上させる支援
このうち一と三は構図がたいへん似ていますが、三は対象が「医療機関」であるところがやや特殊です。私個人としては、医療機関といえども一般企業と基本的な組織構造は同じだと考えていますが、世間的には病院などの医療機関は特殊な世界だと捉えられているフシがあります。実際に、企業研修を展開している講師などからは「病院はやりにくい」といった声が聞こえます。
医療機関が特別視されがちな原因は明らかではありませんが、人間の交流という側面からは、その「閉鎖性」がよく指摘されています。つまり一般企業に比べ、他業種(例えばサービス業や流通業・製造業など)の人間との交流が少ないのです。特に医師はその傾向が明らかです。
それならば、医療機関の内情にも精通し、なおかつビジネスコーチングや研修のスキルを持った人間が、医療機関向けのビジネスコーチング・研修を行なえば、よりインパクトのある支援活動が出来るのではないかと考えるのです。但しそういう条件を満たした専門家は、実際には殆んどいません。
上記の一に関連したお話をすると、企業の社員の健康を管理し、健康上の問題点を指摘・改善する役割りは、産業医や保健師、人事部などの衛生管理者が担っています。年に1〜2回ほど健康診断を実施し、問題のあった社員には、生活指導や労働条件の変更などを指示します。
それだけでなく月1〜2回程度の「職場巡視」によって、労働条件の点検や提案をします。例えば騒音や空気汚染、粉塵、熱暑や寒冷、明るさ、振動などを見て廻ります。さらに労働時間や交代性勤務の条件などを点検し、健康障害につながりかねない状況があれば、具体的な提案や、場合により改善勧告を出します。
社員を健康にする取り組みは、チームで行なわれます。月1〜2回のペースで「衛生管理委員会」が開かれ、産業医、保健師、人事部などの衛生管理者等が出席し、健康問題について討論します。労働時間などの問題点がある場合には、社会保険労務士も関与します。
実際にどのくらい徹底して取り組まれているかというと、企業によってかなりの温度差があるといわれます。概して大企業ほど取り組みは熱心で、福利厚生にかける予算も高額を当てられます。有名な大企業では自前で病院やスポーツ施設をもっており、社員の健康を管理する専門の部署があります。
それに対して中小企業では、全体的にお寒い限りです。従業員50人以上の企業では産業医と契約する必要がありますが、それを実施している企業はむしろ少数です。仮に産業医を雇っていても、月1回も職場に来るかどうか、という状態の所が多いと聞きます。福利厚生の厚さも、大企業に比べ見劣りします。
そのような現状なので、生活習慣病などの有病率も中小企業の方が悪さが目立ちます。会社の規模が小さく、社員が有給休暇を取りにくいとか、健康増進のための取り組みに予算をかけられないとか、様々な事情があるようです。
それに中小企業の社長さんにしてみれば、社員の健康が大切なことはわかるが、厳しい財務状態の中でどれだけ社員の健康増進のために予算をかけられるのか、はっきり言って余裕がないのかもしれません。健康管理にお金をかける前に、財務状態を改善させることに予算を組みたいというのが、正直なところでしょうか。
従って、社員の健康に気遣いつつ、会社の業績を無理なく向上させるという取り組みが、どうしても必要になってきます。それが私の構想する「ビジネスコーチ・産業医チーム」です。このチームには保健師やカウンセラーなども加わり、企業を個人と組織の両面からバックアップするのです。
| コラム一覧 |
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
あなたの自然治癒力を引き出し心身の健康づくりをサポートします
病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
03-3277-3737