平成22年4月1日施行(1) 割増賃金率の引き上げ - 社会保険労務士業務 - 専門家プロファイル

本田 和盛
あした葉経営労務研究所 代表
千葉県
経営コンサルタント

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対象:人事労務・組織

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平成22年4月1日施行(1) 割増賃金率の引き上げ

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労働基準法 法改正
●労働基準法が改正され、来年4月より月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、「25%以上」から「50%以上」に引き上げられる。60時間までは現行の割増賃金率(25%以上)が維持されるが、企業経営への影響は避けられない。もっとも、中小企業については当面この措置が猶予されることとなっている。

●長時間残業によりメンタルヘルス不調者(うつ病)が増加していることに鑑み、ワーク・ライフ・バランスの視点から残業時間を抑制することが、今回の法改正の目的である。特に月60時間を超える長時間残業に従事する労働者の多くが、働き盛りの30歳代であることには留意する必要がある。先日、30歳代の自殺が過去最悪となったとの報道があったが、それと今回の措置は符合する。

●今回の法改正に合わせて、厚生労働省令(時間外労働の限度基準の告示)の改正が予定されており、時間外労働が月45時間を超えると、「25%以上」ではなく「25%超」の割増賃金率で割増賃金を支払う義務が課せられるようになる。この支払義務は努力義務であり、また法律ではなく省令の改正であるため拘束力は強くはないが、労働基準監督署の指導対象とはなりうるので注意が必要だ。

●また上記の省令改正は、中小企業であっても猶予措置は設けられていないため、中小企業であっても、何らかの対応をせざるを得ない。具体的には、36協定を締結して労働基準監督署に届け出る際に、また事業所への臨検の際に、指導が行われると予想されている。

●労基法改正で60時間を超える時間外労働については、50%以上の割増賃金率が適用となるが、この内、今回引き上げた割増賃金の支払いに代えて、有給休暇を与えることができるとする法改正も行われた。たとえば、今まで25%の割増賃金率で割増賃金を計算していた会社が、50%の割増賃金率とした場合、今回引き上げた25%分については、有給休暇として付与することが可能となる。具体的には、60時間超の時間外労働4時間で有給休暇1時間となる。

●ただし、有給休暇は半日または1日単位で付与する必要があるため、半日(4時間)の有給休暇を付与するためには、60時間を超える時間外労働が16時間必要となり、結局1月の時間外労働時間数が76時間にならないと、割増賃金の支払いに代えて有給休暇を付与できないことになる。(割増賃金として受け取るか、割増賃金に代えて有給休暇として受け取るかは、労働者に選択権があるので注意)

●また、現行では原則日単位でしか取得できない年次有給休暇を、1年に5日分を限度として、時間単位で取得できるようになる。年休を時間単位で取得できるようになるので、この時間単位年休と先の時間単位で発生する有給休暇と併せて、休暇を取ることも理屈上は可能となる。

●いずれにせよ、今回の法改正で時間外労働のコストは上昇するので、企業は時間外労働抑制に動かざるを得ない。ではどうするのか。残業カットやサービス残業は違法であるから選択肢には入らない。

●残業を抑制する一番手っ取り早い方法は、「ノー残業デー」を設けて、強制的に社員を帰らせることだ。仕事を減らさないで「ノー残業デー」を導入しても意味はないと思われるかもしれないが、案外、これで残業が減るのである。「定時内に業務が終了しなくとも、残業すれば良い」というマインドだった社員が、「残業できない」と思って必死になって仕事をするから、結果として仕事の効率が上がるのである。

●また業務を非同期化するのも、残業を減らす良い方法である。非同期化とは、会議やミーティングのように、従業員が同じ時間・場所を共有しなければならない活動を減らし、各自の自由裁量で使える時間を増やすことである。たとえば会議は、それだけで時間を取られてしまうが、会議への参加者を限定し、会議に参加しなかった従業員にはメールで結果を知らせ、空き時間にでも確認するようにさせれば、時間は有効に活用できる。

●情報共有のためという名目で開かれる報告会も、メールに置き換えることで非同期化させることができる。またメールの送信先や文書の回覧先を絞ることも、読む時間を節約するという意味では有効である。

●このように、労働時間を効率化させるためのタイムマネジメントのテクニックはいろいろあります。皆さんの会社でもぜひ試してみて下さい。