建築のロマン - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

増井 真也
建築部門代表
建築家

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対象:住宅設計・構造

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建築のロマン

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チョット気になるデザイン
先日長野県の入笠山にある入笠小屋に泊まりました。この小屋は詩人の尾崎喜八さんが戦火を逃れるために疎開したときに作ったとのことですが、今では小間井さんという初老の主が宿泊客を迎えてくれます。

写真のガラス張りのリビングは小間井さんの手によるセルフビルドです。聞くところによると毎日、毎日セルフビルドでどこかしらを手直しし続けているということでした。周りを見回してみると、例えば杉の貫板という雑材料で窓枠を作っているところもあれば、本当にこれでよいの?と疑ってしまうような暖炉、連続してガラスがはめ込まれている普通に作れば多くのコストがかかりそうな羽目殺し窓が90角くらいの雑材で意図も簡単に作られている様子、どうやって防水しているのかまったくわからないような3階に作られた露天風呂、そしてそこに上っていくためのくねくねとした長い長い渡り廊下、ここには一般常識では考えられないような自由な建築がありました。

日本の建築は高すぎる、これは歴然とした事実だと思います。この建築は小間井さんの手による法律も一般的な収まりもすべて無視した自由な作品です。そして、ものすごく安く作られています。虫が入ってきたり、隙間風が吹いたりの苦労は当然あるでしょう。しかし、肌寒い季節に暖炉に火を入れてゆったりとくつろいでいるときの感覚はそんなことすらいとおしく思えてくるようでした。

一般常識って何なんでしょう。本当に人が気持ちよくなれることとの間にある溝が、どんどん大きくなっていっているような気がします。この感覚を忘れないためにももう一度行ってみようと思います。

ますいいリビングカンパニー
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