痴漢事件に最高裁が無罪判決 (1) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

羽柴 駿
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(弁護士)
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閲覧数順 2016年12月05日更新

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痴漢事件に最高裁が無罪判決 (1)

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連載「新・刑事法廷」

無罪判決



 最高裁判所の第3小法廷は4月14日、満員の小田急電車の中で女子高生の身体に触るなど痴漢行為をおこなったとして起訴された被告人男性(62歳)に対し、一審・二審の有罪判決を破棄し無罪判決を言い渡しました。

 その理由として判決は、この種の痴漢事件では目撃者や物証など客観的な証拠が得られず被害者の訴えが唯一の有罪証拠である場合が多く、特に慎重な判断が求められると指摘しました。そのうえでこの事件では、被告人が犯人であるとする女子高生の供述の中に幾つかの不自然な点があることを指摘し、その供述の信用性には疑いの余地があるとし、その結果、被告人が犯人であるとするには合理的な疑いが残るとしています。

 私自身も幾つかの痴漢事件を担当しましたが、いずれも被告人が犯行を認めたものでした。しかし、今回の最高裁判決が指摘するとおり、この種の事件でもし被告人が否認した場合、果たして被害者の女性の言い分と被告人の言い分といずれが真実なのか、判断に迷うことは少なくないだろうと思われます。その意味では今回の判決は、安易に被害者の言い分のみに頼り、被告人の言い分を頭から嘘と決めてかかるような捜査、起訴、裁判があってはならないことを示したものであって、私のように多くの刑事事件を手がけてきた弁護士から見れば、えん罪の発生を防ぐために役立つものとして歓迎できます。


女性の地位向上と痴漢行為防止



 しかし他方で、かつて電車内の痴漢行為は被害女性の多くが泣き寝入りを強いられてきたもので、仮に警察に訴え出ても軽く扱われることが多く、事実上野放しに近い状態であったのが、最近になって女性の地位の向上と共に痴漢行為に対する取り締まりが厳しくなり、以前であれば見逃されてきたような行為も直ちに逮捕され、女性専用車両の導入など防止対策も進んできたという経過があります。

 今回の判決はあくまで痴漢えん罪の防止という点に限って評価されるものであり、このような女性の地位を向上させる社会的動きそれ自体を抑止するような結果となるのであれば本末転倒です。以前のような痴漢行為という罪悪を軽視する風潮に戻ることは決して許されてはならないことです。

 ちなみに、今回の判決を受けて女性の自衛策を考えてみました。電車内で痴漢行為に遭ったら、迷わずにその犯人の手を力一杯ひっかいて傷つけてやりましょう。これで犯人であることは一目瞭然。えん罪も防止出来ます。

 (次回へ続く)