シリーズ 新・刑事法廷を始めるにあたって - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

閲覧数順 2024年04月24日更新

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シリーズ 新・刑事法廷を始めるにあたって

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連載「新・刑事法廷」
私の著書「刑事法廷」の出版から11年がたちました。

「刑事法廷」は、私自身の担当した刑事事件の中から、一般の市民にとって興味がありそうなものを取り上げることによって、刑事司法の現場の実情と弁護人の苦労を判りやすく解説しようとしたものでした。幸い多くの方々に支持していただき、一刷は完売となりました(現在は私の事務所でのみ二刷を販売中です)。

 私はこのオールアバウトの専門家に登録した機会に、「刑事法廷」のダイジェスト版をコラムとして掲載し、多くの方々に読んでいただいてきました。

 その出版後の11年間にも、日本の刑事司法の現場では依然として多くの問題が生じました。たとえば光市母子殺人事件では、被害女性の夫が被告人(犯行時少年)への死刑判決を求めて積極的に発言し、同時に現在の日本の刑事司法で遺族がいかに不当な立場に置かれるかを指摘して、それがマスメディアに大きく取り上げられることで話題を呼びました。

 その事件ではまた、被告人だけでなく弁護団に対する感情的な非難がマスメディアやネットを中心に大きく巻き起こり、ついには弁護団員への懲戒請求を扇動する弁護士まで現れ、刑事司法のあり方について改めて冷静な議論の必要性が指摘されました。一方当事者に偏った感情論に流れがちな日本社会の欠点が表れたというべきでしょう。

このように、従来からと同様の問題が繰り返されると同時に、幾つかの重要な変化も見られました。被害者参加制度の新設もその一つですが、志布志事件や富山事件のような明らかなえん罪が明るみに出たことなどから、従来の警察の捜査に根本的な問題があるのではないかとの疑問が生じ、密室における取り調べの適正化、特に録音・録画(可視化)の必要性が広く認識されるようになり、一部分ですが検察・警察の取り調べに録画が導入されました。

また今年5月21日から実施される裁判員裁判は、日本の刑事司法を根本から変革する可能性を有する新制度です。これには賛否両論があり、厳罰化がすすみ死刑判決が増えるのではないかなど、実際にどのような結果がもたらされるのか、予断を許さない点も多いことは事実です。

 そこで私は本欄にて、裁判員裁判に限らずこれから生じてくる様々な刑事事件に関する問題を広く取り上げて、私なりの意見を皆さんに伝えていこうと思います。題して「シリーズ 新・刑事法廷」です。

 なお、この新シリーズは、私自身のホームページにまず掲載し(http://homepage2.nifty.com/law-hashiba/)、若干の時間をおいてからこのオールアバウトのコラムに載せるものであることをお断りしておきます。

(2009年5月15日)