「食育の場」としてのダイニング - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家
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「食育の場」としてのダイニング

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野平史彦の言いたい放題”家族論” 家族の”だんらん”はどこへ行った!?
02−4:「食育の場」としてのダイニング

 イタリアを旅する楽しみは、勿論、古い町並みや遺跡を散策する事だが、その土地の名物料理に出会えることもこの上ない楽しみと言える。ワインはフランスには敵わないと誰もが思っているかもしれないが、酒というのはその土地の料理に最も合う様に造られているものである。だから、イタリアの田舎で食事をする時に、フランスの高級ワインなどナンセンスである。その土地の料理にはその土地の酒が一番美味い。
 イタリアに限らず、ヨーロッパでその都市部においては世界中の料理が食べられるが、家庭では意外と頑にその土地の食が守られている。家庭で世界中の料理を普通に食べている国民は、もしかしたら日本人だけかも知れない。スローフード運動は、どちらかと言えばイタリアではなく、真っ先に日本で起こるべきだったのではないだろうか?
 
 さて、今日は「食」と「だんらん」について書こうと思っていたのだが、前置きが長くなってしまった。
 「食」というのはおよそ世界のどこでも家族の「だんらん」と密接に結びついている。「家族が一緒に食事をする」というのは、もしかしたら人類が「火」を手にしてからずっと続いてきている普遍的なことなのかもしれない。
 しかし、今、日本において僕らの日常はそれとは全く違ったものになっている。朝は出かける時間が皆、違うので母親は朝食の用意をすることもなく、皆、勝手にパンをかじったり、あるいは、何も食べずに家を飛び出してゆく。
 夕食の時間に旦那は帰らず、子供達は塾に行ったりしているので、母親は皆の夕食の支度はするが、自分はひとりレトルトで済ませたりしている。
 子供達の手が掛からなくなる頃には、主婦は働きに出ている場合も多く、殆ど毎日カップラーメンを食べている子供も少なくない。
 最近、切れる子供が多くなったと言われるが、カップラーメンなどに含まれる着色料や食品添加物の中に、脳に作用する物質が含まれていることが分かっている。

 インスタントラーメンができて、カップヌードルができて、レトルト食品、冷凍食品など、経済成長と共に主婦が台所に立つ時間がかつてより大幅に短縮される様になったが、「家庭の味」は消え、食卓から「だんらん」が消えて行った。

 こんな現状を改め、伝統的な日本の食に立ち返り、だんらんを取り戻そう、と言っても、そう簡単なことではない。しかし、「食」と「だんらん」は我々の肉体的な健康と精神的な健康を担ってきたことは確かなのだ。

 形だけの「ダイニング」ではなく、「食育」の場としてのダイニングという視点を持てば、もう少し住宅のプランニングも違ってきて良さそうな気がする。

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