退去時の費用で損しない!賃貸住宅の住まい方と知識1 - 消費生活アドバイス - 専門家プロファイル

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東京都
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退去時の費用で損しない!賃貸住宅の住まい方と知識1

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こんにちは。消費者考動研究所/消費生活アドバイザーの池見です。


3月から4月は、卒業や入学、転勤や就職・転職など異動の多い時期。それに合わせて、借りていたアパートやマンションを退去する人、そして新たに借りる人もたくさんいらっしゃいます。

賃貸住宅は、ほとんどの人がいつの日か退去します。全国の消費生活センターには、「退去する時に予想外に高額な工事費用(リフォーム代)を請求された!」といった、原状回復に関する相談が非常に多く寄せられています。その原因を分析すると、大家さん(貸主)側だけではなく、借りている人(借主)にも原因がある例が少なくありません。

入居したばかりの人も、既に住んでいる人も、これから借りる人も!
いずれ訪れる退去する日に備えて、自分から損する原因を作らない住まい方のポイントをお伝えします。


*本文中、「貸主」「大家さん」は契約上の賃貸人を指し、「貸主側」は貸主と管理会社を含む意味です。また、「借主」「借りている人」は同じ意味で契約上の賃借人を指します。

[目次]
1.契約書の内容をよく確認する
      借りて住む人の重要キーワード その1 原状回復義務

2.部屋の鍵を受け取ったら、すぐに部屋の状態をチェックする
      借りて住む人の重要キーワード その2 善管注意義務を果たす

3.きちんと掃除し、メンテナンスを行う

4.問題・不具合が発生したら、貸主側にすぐ連絡・相談する
      借りて住む人の重要キーワード その3 大家さんや管理会社との信頼関係を築く

5.約束事やマナーを守る


1.契約書の内容をよく確認する

不動産屋さんで契約を結ぶ時、契約書を隅々までしっかり読み、内容を十分に理解してサインしている人は、あまり多くないのではないでしょうか。その場の雰囲気に流されたり、読むのが面倒だったりして読んでいないケースが多いようです。

契約書には、家賃や契約当事者人の名前だけではなく、入居中のルール、注意事項、借りる人の修繕負担の範囲などが書かれています。これらの内容全てが契約の条件!契約を結ぶと、貸す人も借りる人も、契約の条項の内容すべてを十分理解し守る義務と責任が発生します。

また、契約書の控えは、必ず将来退去して全ての生産が終わるまで、きちんと保管しましょう。もし、契約書控えを渡されていない場合は、今すぐ貸主側に発行してもらいましょう。

借りて住む人の重要キーワードその1 原状回復義務(げんじょうかいふくぎむ)

原状回復は、一般的には「元の状態に戻す」という意味です。しかし、国土交通省が賃貸住宅の原状回復トラブルを防ぐ考え方を示した「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、次のように定義されています。

「賃借人の住居、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

もう少し柔らかい言葉で説明すると、「建物の価値は住んでいるうちに減少する。原状回復とは、その減少価値のうち、借りている人に責任がある部分を復旧すること」となります。

更にガイドラインでは、「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態の戻すことではない」と明確化しています。
例えば、壁紙は一般的に6年経過すると価値が1円に減少すると考えられています。入居した時に壁紙が新品だったとしても、8年後に退去した場合の工事代見積もり方法は、壁紙の材料代 @1/㎡×△△㎡、施工代@○○〇/㎡×△△㎡で計算することになります。

なお、このガイドラインは法律ではなく、あくまでも考え方です。
契約の際に、貸主と借主がお互いに十分理解納得の上合意した特約(退去時にクリーニング代〇万円支払うなど)は、一方的に消費者の不利益な条項以外有効です。しかし、国として示していますので、契約の時や交渉する時、裁判所での判断基準など、さまざまな場面での基本的なよりどころになっています。


2.部屋の鍵を受け取って入室したら、最初に部屋の状態をチェックする

前出の重要キーワードのように、借りている人には原状回復義務があります。
では、もし、あなたが部屋を退去する際に、最初から傷がついていたフローリングの修理代10万円を請求されたら、どう反論し交渉しますか?「自分がつけた傷じゃない!元からあった傷です」と言い切るには、入居時から裏付けとなる証拠の確保が不可欠です。

まず、鍵を渡されて初めて部屋に入る時には、必ずメモ帳・高画質の撮影日付が入るカメラ(無ければスートフォンやタブレット)、メジャーを用意しましょう。そして、主に次の項目をチェックしましょう。できれば、極力大家さんか管理会社の人(以下 貸主側)に立ち会ってもらいましょう。

・玄関ドアの傷、開け閉めスムーズかどうか、鍵に不具合はないか
・天井・壁。床の傷や汚れ、穴あき、シミ、カビ、剥がれ、浮きの有無
・ドア・窓・障子・間仕切りの開け閉めに問題はないかどうか
・洗面・トイレ・浴室・給湯器の水やお湯がきちんと出るかどうか、きちんと排水するかどうか
・電気・ガスがきちんと作動するかどうか
・床を踏んでギシギシ鳴る場所や、不安定に柔らかい所は無いか

確認したら、一つ一つチェックリストを作ってメモし、記録を残しましょう。各部屋の天井・壁・床の状態写真を、日付が表示される設定にして撮影し、チェックリストと一緒に保管します。
このチェックリストは、必ず貸主側の受領サインをもらい、自分と貸主側と複写で控えを共有してください。傷や汚れ、不具合など問題がある場合は、すぐに貸主側に報告し、修繕を検討してもらいましょう。その際、「言った・言わない」トラブルを防ぐため、貸主側とやり取りした言葉もできるだけ正確にメモして記録を残しましょう。



出典:国土交通省「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(word版)

(その2に続く)

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(東京都 / 消費生活アドバイザー)
消費者考動研究所 代表

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消費生活アドバイザーは、消費者・企業・行政の懸け橋として、法律、生活知識、消費者志向経営や環境問題まで幅広い専門知識を持つ消費生活の専門家です。企業・自治体等で培った豊富な実務経験とノウハウで、貴方の消費者力UPと企業活動をサポートします。

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