世界金融危機−その全貌 その3 - ライフプラン・生涯設計 - 専門家プロファイル

山本 俊樹
インテグリティ株式会社 
ファイナンシャルプランナー

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伊藤 誠
伊藤 誠
(ファイナンシャルプランナー)
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(ファイナンシャルプランナー)

閲覧数順 2016年12月10日更新

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世界金融危機−その全貌 その3

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やさしい経済の話し 世界金融危機

連鎖の始まり
2007年7月ムーディーズがサブプライムローンを組み入れたRMBSを大量に格下げ。RMBSの価格急落。そして、そのRMBSを組み入れたCDOも同じく価格が急落。サブプライムローンが含まれていなくとも、その疑いのあるような証券化商品が全て値がつかなくなり、事実上取引が停止してしまった。

1.銀行が巨大損失計上
銀行間市場の凍結は、イギリスのノーザンロック銀行の取り付け騒ぎを起こすまでになった。イギリスでは140年ぶりの取り付け騒ぎである。ノーザンロックは、市場からの短期借入によって住宅ローンを供給していた。その短期資金が取れなくなったのである。ノーザンロックは最終的には国有化された。

価格が急落したCDOなどを多く保有していたのが、銀行が運営するSIVという特別投資会社である。これも、ABCPプログラム同様、CPで調達していたが、2007年9月はじめにABCPの金利が突然、5〜6%にも跳ね上がった。ABCPの市場規模は約1兆2000億ドルで、SIVはその3分の1の規模であった。それらのCPの買い手が、SIVの内容がわからずCPが何に使われるかわからないということで、一斉に買いを控えたのである。11月には、ABCPの発行規模が9000億ドルにまで落ち込んだ。つまり、3000億ドルを越える資金を銀行が負担せざるを得なくなった。

そしてついに、銀行はこれらのSIVを連結対象にせざるを得なくなってしまった。そのため、一気に資産額が増加し、銀行で求められている自己資本比率が急激に低下。資本不足の状態に陥ってしまった銀行が続出した。そのため、中東ファンドなど政府系ファンドと増資交渉を始める銀行も多くみられた。

2.モノラインの格下げ
2008年に入って、債権契約の保証を専門に行っている金融機関(モノライン)の格下げが更なる損失の拡大を招いた。(MBIA、アムバック、FSA、FGICの大手4社をさす)
そもそもモノライン会社は地方債を専門に保証する会社として成り立ってきたが、経営の多様化の一環として、証券化商品への保証を始めた。2006年末で、サブプライムローン関連の証券化に対する保証残高は約95兆円に達していた。しかし、元々地方債の保証で且つほとんどデフォルトもないために、必要とされていた資本は大きくなかった。CDOの保証を始めてもその資本比率はほとんど変化なかった。モノライン保険業界全体で、約3兆3000億ドルの証券を保証しているが、資本基盤は220億ドルしかなかった。要するにレバレッジが150倍である。CDOに問題が発生して一斉に格付け機関が見直しを行なったが、そもそもリスクのあるCDOに保証をつけることに対しては過小資本であったにもかかわらずAAAの最高格付けを付与していたこと自体が信じられない。

このモノライン会社の格下げが、保証をつけていたAAAの証券化商品ばかりでなく、地方債の価格急落を招いた。地方債、社債を含めて、総額240兆円の市場に影響を与えた。そしてさらに、保証付債券を大量に保有していた証券会社の元本保証のMMF(マネー・マーケット・ファンド)に対する影響は深刻で、証券会社は元本割れを防ぐために大量の証券を市場に売りに出し、債券の価格下落に拍車をかけた。

3.連邦住宅金融公社2社の危機
アメリカの住宅ローン証券化は、1920年代に設立されたファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)によって始められた。(詳細後述)

その2社が、RMBSの価格急落と、原債権の住宅ローンのデフォルト率上昇により多額の損失を計上し、経営難に陥った。そこで、政府はこの2社に対し公的資金を投入し、2008年9月に政府の管理下に置くことを決定した。両社が破綻すれば、世界の金融市場が大混乱に陥るとの考えからである。事実、両社が保有もしくは保証する住宅ローン関連証券は約5兆3000億ドル(約540兆円)と日本のGDPと同額である。世界各国の金融機関や中央銀行が保有する両社発行の債券や関連商品は約1兆6000億ドル(約170兆円)に上り、両社の破綻は全世界に波及する危険があった。

4.銀行間市場の機能停止
これら負の連鎖の終局が銀行間市場の機能停止である。
金融機関は本来、保有する債券については「時価会計」を求められている。これは、今までグローバルスタンダードといわれ、日本の金融機関も米国にせっつかれる格好で採用した会計基準である。
今まで見てきたように、サブプライムローンに端を発した問題は、債券市場全体に影響を及ぼし、価格急落をもたらした。時価会計を採用する銀行は、すぐにその影響を受けた額の損失計上をせざるを得なくなった。

一方、銀行は自己資本規制があり、ある一定の自己資本を保たなければならない。多額の損失を計上するということは、自己資本を減少させ、自己資本比率を保つためにアセットを売却するか、資本を増強する必要に迫られる。当然、破綻の危機にも直面するのである。

各銀行は、通常、資金を融通し合うのだが、銀行に対する相互の不信感がマーケットに充満し、資金を供給しなくなったのである。そして、銀行間の資金取引が停止した。一旦、資金循環が止まると、貝のようにそのマーケットは閉ざされてしまった。

これが、これまでに起こった金融危機である。G7をはじめ、世界各国が過去最大の危機と認識し、打つべき手を全て打ちつくしている。日本がバブル崩壊後の後始末にかかった10年をこの2ヶ月で、それも世界的規模で実行に移されている。それだけ恐るべき金融危機である証拠だろう。

2008年9月のリーマンブラザーズの破綻から始まった。AIG、メリル、モルガンスタンレー等々多くの金融機関が危機に瀕した魔の2ヶ月(現在も続いているが)における出来事や各国の対策については、連日詳細が報道されているのでここではその全体についておさらい程度に見ておくことにとどめる。

さて、ここまで、今回の金融危機の概要を眺め、サブプライムローンからいかにして危機が広がっていったかをみてきた。
次回以降では、個別の事柄(証券化とは、CDOとは、SIVとは・・・)について解説することとする。そして、その解説を読み終わってから再びこの第1部読んで頂くとより理解できると思われる。

注)このレポートで格付けについてAAA、AA・・と表現しているが、これは本来S&Pが使用している格付けの記号である。しかし、このレポートでは、一般的な格付け、トリプルAをAAA、トリプルBをBBBと表現することとする。