米国:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第3回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第3回)

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米国特許判例紹介:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第3回) 
〜消尽論に関する最高裁判決〜

   Quanta Computer, Inc., et al.,
   Petitioners,
   v.
   LG Electronics, Inc.

河野特許事務所 執筆者 弁理士 河野英仁 2008年10月7日


(2)特許部品の販売により特許権が消尽する
 最高裁は、特許発明の基本的特徴を具体化する特許部品の販売により、特許権は消尽すると判示した。

 最高裁は、Univis事件を挙げた。以下にUnivis事件の概要を説明する。Univisレンズ社(以下、U社)はメガネに関する特許を所有している。

 この特許は、異なる複数のレンズブランクを融合して、2焦点または3焦点レンズを製造する技術である。レンズブランクとは、サイズ、デザイン、及び、配合が適した未加工の不透明なガラスの塊をいい、これは研磨された後、メガネの多焦点レンズに利用される。

 U社はレンズブランクを融合して製造されるメガネに関する特許について、複数の業者に実施許諾を行った。U社は卸売業者に対し、特許部品であるレンズブランクを融合して2焦点または3焦点レンズを製造し、販売する権利を実施許諾した。メガネは個人により微調整が必要である。下流の小売業者には、このレンズブランクを最終研磨させ、微調整させた上で、最終ユーザに販売する権利を実施許諾した。

 以上をまとめると、特許権は最終部品であるメガネに付与されているところ、レンズブランクを融合してメガネのレンズ、すなわち特許部品を卸売業者に実施許諾している。さらに最終の小売業者にこの特許部品であるレンズを研磨及び微調整させ、最終製品であるメガネを販売させている。

 特許権者であるU社は、メガネの特許について、卸売業者及び小売業者の双方に実施許諾しているが、妥当であろうか?この点が争点となった。すなわち、小売業者はほぼ製品としてできあがった特許に係るレンズを、ユーザの視力に合わせて研磨・微調整しているに過ぎないのである。

 最高裁は、レンズブランクを融合しメガネの半完成品を得ることは、特許発明の基本的特徴を具体化していると述べ、また、この半完成品を研磨して小売業者が最終品であるメガネを完成させることは何ら、固有のものではないと述べた。そして、特許を実施するためにのみ使用することが可能な特許部品の適法な販売により、当該部品の販売に関する特許は消尽すると判示したのである。

 最高裁は上記判例を本事件へ適用した。Univis事件におけるレンズブランクと同様に、Intel製MPUは、発明を完全に実施する物ではないが、特許発明の主要部分を構成する。

 Intel製MPUは、メインメモリ及びキャッシュメモリに対するアクセスを制御する。そして、メインメモリに対して、キャッシュメモリをチェックし、また、読み取り要求及び書き込み要求を比較することにより、641特許及び379特許を実施する。Intel製MPUは、また733特許において他の様々なコンピュータ部品によるバスアクセスの優先度を決定する。

 当然ながら、Intel製MPUをメモリ及びバス等の付属品に接続しない限り、これらの機能を実行することができない。しかしながら、特許発明の主要な処理はMPUにて実行され、これらの付属物はシステムにおける標準的な部品であり、なんら独創的・創造的な処理を行っていない。Q社は発明の中枢をなすIntel製MPUに、独創的・創造的でないメモリ及びバス等の付属品を接続しているに過ぎない。

 以上の理由により、最高裁は、発明の基本的特徴を具体化する特許部品「Intel製MPU」を、Q社が購入した時点で、特許は消尽すると判断した。

5.結論
 最高裁は、LGE特許は消尽したことから、もはやQ社に対し特許権を主張することができないと判示し、CAFCの判決を差し戻した。

6.コメント
 特許に係る完成品を適法に購入した場合に特許は消尽する。これに対して、特許部品を適法に購入したとしても原則として特許は消尽しない。しかしながら、本事件の如く特許部品が発明の中核をなし、これによって発明を実質的に具現化する場合は、特許は消尽すると判示された。

 また、本事件では、装置クレームの機能を発揮する方法クレームは消尽すると判示された。日本の特許法に関しても同様の取り扱いになるものと解されている。吉藤は、方法について消尽論が適用されるか否かにつき、一般的には消尽しないと述べ、その例外の一つとして以下の形態を挙げている。

 「特許権者が方法の特許権とともにこの方法を実施するための装置についても特許権を有し、かつ、その方法はその装置によってのみ使用され、その装置はその方法にのみ使用される場合は、装置についてのみ特許が存在する場合と異なるところがないので、特許装置を販売したことによって方法の特許権は用い尽くされたことになる。」

判決 2008年6月9日                                  
                                          以 上
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