- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
基本的にはその機能性を満足させなければならないものだが、
時には邪魔臭いものでもある。
だから、その存在感をできるだけなくすデザインを求められたりする。
鉄骨階段はその点、軽快感のあるデザインができていい。
蹴込板をなくしてシースルーな感じの階段ができる。
尤も、蹴込板がないと登る時に怖い、という御夫人がいるから
ちゃんと確認しておくことを忘れてはいけない。
鉄骨階段は、通常、両側ササラ(側板)の間に
段板をセットするタイプが普通で、最も安価だが、
側板をイナズマ型にすると、ちょっと軽快になる。
しかし、強度的に側板の厚みが必要だから、
横から見るとまだ厚ぼったい感じがする。
この家の階段は、総てフラットバーで構成されている。
側板もフラットバーでトラスを組んでいるので、
強度的には強く、横から見てもシースルーになり、
最も軽快なデザインになる。
しかし、最も高価なデザインとも言える。
中間手摺もステンレスワーヤーでその存在感を極力消している。
白く塗ってしまっては、折角のスレンダーな階段が膨張して見えてしまうから
黒の艶消し(墨色)で空間に締まりを与えている。
階段の背景となっている壁は、米松練り付け合板の目透かし張りである。
ここも底目地部分に黒テープを貼って、デザイン的な統一感を持たせている。
設計事務所の仕事は、既製品を組み合わせる事しかできないHMとは基本的に違う。
自分の手で物を作り出す腕のいい職人ではないが、
頭の中は、そこに住む人だけのためにオリジナルな空間をつくりだす、職人そのものである。