呼吸する壁をつくる(その2)ーー調湿する断熱材 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家
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呼吸する壁をつくる(その2)ーー調湿する断熱材

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現場から大地に還る家を考える 晴耕雨読の家
「呼吸する壁」では調湿性能のある断熱材が必要となる。
従って、外張りに用いる発砲プラスチック系の断熱材ではなく、繊維系の充填断熱となる。
現在、考えられるのは新聞古紙から作られるセルロースファイバーと羊毛断熱材である。
これらは自然系断熱材として製造エネルギーも極めて小さい。
しかし、羊毛断熱材は製造エネルギーが小さくてもオーストラリアやニュージーランドからの輸入だから輸送エネルギーがかかる。断熱材のような軽くてかさばるものを輸入する、というのはあまりエコとは言えない。だから羊毛断熱材はあまり使わない。

さて、この「呼吸する壁」は室内で発生した水蒸気を外壁内に入れる、
ということだから、当然、壁内結露が心配される。
しかし、壁内結露を起こす条件は定常解析で算定することができる。
この地においては、断熱材の外側を境界面として、内外の透質抵抗の比が2:1以上であれば壁内結露は起こらない。
北海道などの寒冷地ではこの比が5:1以上必要となり、壁面の構成上、防湿シートが必要になってしまう。
構造用合板に代わる透湿性のある面材を用いて室内側の防湿シートをなくしながら
所定の透湿抵抗比を確保することで壁内結露を起こさずに調湿性のある壁を作る事ができる。
しかし、この定常解析はひとつの目安であって、実際には、個別に非定常解析を行わなければ本当のところは分からない。
セルロースファイバーは他の繊維系断熱材に比べて透湿抵抗が大きい訳ではないのに
保湿性が高く壁内結露を起こさずに調湿機能をもたせることができる。
尤も、そのメカニズムはまだ解明されてはいないのだが、
内外の透質抵抗の比が1:1でも壁内結露が起こらないことが確認されている。
いずれにしろ、定常解析による透質抵抗比を頭に置きながらより安全側で壁面構成を考えるのが肝要である。
「高断熱・高気密」後の家づくりは、このように石油化学建材から脱却し、
自然素材を用いてその土地の気候条件に合った「透湿する壁」をつくることである。

しかし、ここでは予算の関係で結局、セルロースファイバーは使えなかった。
使ったのは最も一般的な袋詰めのグラスウールである。
これを、防湿を気にせずに軸組に充填してもらった。
これでも壁内結露の心配はないからOKである。

よく自然素材を使った「呼吸する家」と言って宣伝している工務店や設計者がいるが、それは単にイメージを語っているにすぎない。きちんと内部結露が起きないことを計算して確認しているところはまずない。
人は皆、イメージにダマされる!
僕は決してそんなウソはつかない!