晴天の霹靂　その4　お母さんがしてくれたことの記憶

前回は、人は、どちらかというと、人から
「してもらって、ありがたかった事」よりも「してくれなくて、不満に思った事」
を良く覚えていると言う話をしました。

内観療法
と言うのは、そうした
「人からしてもらった事を思い出し、感謝の念と共に、自分が人から愛されている存在である事 も思い出していただく」
療法と言えると思います。


元々は、吉本伊信（よしもと いしん）という浄土真宗の僧侶が、修養のために考案したものでしたが、日本発の心理療法として改良され、現在でも用いられるものです。

そのため、内観療法を行う施設は「道場」と呼ばれることもあり、各地に道場があります。


正式には、その道場に1週 間泊まり込み、1日のほとんどを使って、
 
母、父、兄弟など、自分の身近な人（時には自分の身体の一部）に対しての今までの関わりを、

1.してもらったこと
2.して返したこと
3.迷惑をかけたこと

の3つのテーマにそって繰り返し思い出します。

もう少しやりやすくするため、日常の、時間がある時を使って、それらを思い出す方法も考案されています。

そうした事を行う事で、劇的な価値観の転換が起こることとなります。

神経症やうつ、各種依存症など、様々な精神的な問題に効果が期待できます。

私も講演会に出席したことがあり、その時は、長時間思い出す時間がなかったので、講師の先生が簡易的なやり方を紹介して施術していただきました。



会場の全員が軽く目をつぶり、先生の声に耳を傾けます。





あなたの記憶の中で、思い出せる一番最初のお母さんの記憶はなんでしょう？






まだ幼稚園位だったかも知れません。




朝、「お早う。もう朝よ」といつも声をかけて起こしてくれたのは、お母さんではありませんでしたか？




起きるとお膳には出来たての朝ごはんが用意されていたかも知れません。




いつもそれを用意してくれていたのは、やはりお母さんではありませんでしたか？




遊びに行く時、洋服を着替えるのを手伝ってくれたかも知れません。




帰って来たら、おやつが用意されていませんでしたか？




どろんこになった服を、毎日洗濯してくれていたかも知れません。




小学校の初登校の日に、まっさらな上履きを用意してくれていませんでしたか？




夏休みの宿題を、早くしなさい！と怒られませんでしたか？




でも一緒に手伝ってくれたりはしませんでしたか？




誕生日の日に、ごちそうを作ってくれたのではありませんか？





プレゼントを何かもらったかも知れません。




友達とケンカをしてしまった時、なぐさめてくれませんでしたか？




あなたは、お母さんを励ましてあげたことがありましたか？




いつもあなたを心配してくれていたのは、お母さんではありませんでしたか？






などなど、時間が許す限り、先生が誘導して、誰にでも思い当たる「お母さん」の思い出のイメージがつづられて行きます。

講演会には50人くらいの参加者が体験しましたが、段々とそこかしこですすり泣く声が聞こえて来ます。

みなさんお母さんの事を思い出しておられるのでしょう。

なんだかそっちの方が気になって、少し集中できなくなってしまいましたが、私もお母さんに「母さん元気か？」と電話したくなってしまいました。


それは晴天の霹靂を観終わった時も同じような気持ちでした。





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