今回のテーマをご覧になって、きっと多くの方は「これはバレエダンサーのレベルの比較や、各国のバレエスタイルの違いについての専門的なお話しだろう!」と思われた方が多いと思いますが、
そこは私らしく(!? 笑)ちょっと視点を変えた所から観えて参ります日本と西洋の違いをお伝えしてみたいと思います。
その違う角度からの視点ですが・・・。
今回は「バレエを観に来て下さるお客様」というものにスポットを当てて、色々なものを観て参りましょう。(^^♪
かつて国内外でバレエダンサーとして沢山の舞台を踏んだ私が、その経験から肌で感じられた事をお伝えしてみようと思います。
これはバレエに限らず、私がたまに行かせて頂くコンサートなどの舞台でも感じる事ですが、日本の観客の方達は(特に拍手をする時などは特に)、常に「周りからどう思われるか?」という意識が大変強い傾向がある印象を受けます。
つまり、ご自分が感動されていて内心では「拍手をしたい!」と思っていても、周りがしていなければ不安になり、拍手をされない方が本当に多いのですね。(゜∀。)
(その中にはたまに、ご自分がバレエをされていて、人の舞台を楽しんで観れずに厳しい批評家になっておられる方もいらっしゃいますが。(笑) )
又ご自分がそんなに感動していなくても、周りが盛り上がった雰囲気になると、ご自分も「そうしなくては!」という感じになり、人に合わせて拍手に参加されている観客の方も多くお見受け致します。
その点、精神的に自立している個人主義の西洋では、「人が拍手をしていなくても、自分が感動したら(例え一人でも)拍手をする」という方が非常に多いです。(勿論その反対もあります)
つまり人に合わせる事なく、ご自分(個)で自立して、ご自分の眼で観た舞台を楽しまれている訳ですね。
とにかく西洋の観客の方達の反応というのは非常に正直でハッキリしているので、良いと思われた時もそうですが、その代わり反対にご自分が良くないと思われた場合も、その反応はとてもシビアでいらっしゃいます。 《゚Д゚》!
根が甘えん坊の方が多い日本人なので(笑)、そういう反応は「冷たい」とお考えの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、日本人独特のその曖昧な反応というのは、
実は優しさというよりも、ご自分の眼で「何が良いのか判断が解らない」という自信の無さから来ているという事も多分にあるのではないでしょうか? (^^;
日本人の方は非常に奉仕や思いやりの精神に溢れている方が多いのに、こと舞台の反応になりますとその本領が発揮できないのは、その自信の無さや不安から来ている様に私の眼には映ります。
又日本の舞台では、逆に観客側にこういう光景も良く見られます。
それは「名の有る外国のものなら一流!」という様なものの観方です。
例えばバレエ大国で有名なロシアですが、全てロシアのバレエ団の公演が質が高いかというと、必ずしもそうではない場合もあるのですが、そういうのを見抜けない観客の層や質というものを感じる事も、私は正直過去の舞台にありました。
(ちなみに私は、個人的にはロシアの正統派(品格と芸術性を誇る)スタイルのバレエが一番好き♡と言っても過言ではありません)(^^♪
そういう観客の反応も又、実は踊る側にも良く伝わっているもので(踊る側は芸術家の感性を持っていますから鋭いのです)、或る意味それは日本の観客が「芸術を理解できない」として軽く見られたりする原因にもなった事が実際過去にはあるのですね。
その様に踊る側が手を抜く様な舞台というのは、見る人が見れば分かるのですが、多くの方は見破れておられない様に当時の私は感じたものでした。
(まぁ、手を抜く様な事をする芸術家も質が良いとは言えませんので、どっちもどっちという所でしょうか?)
では「どの様にすれば、良いものや本物を見抜ける眼を持てるのか?」と言いますと・・・
それは絶えず「本物(質の良いもの)に触れる」という事しかないでしょう。
つまりご自分の観る眼を、ご自身で養う事しかないのです。《゚Д゚》!!
その「芸術を理解できる頭」というのは "感性の脳=右脳で観る" という習慣から来ると言っても良いと思いますが、
そういう感性の扉が閉じてしまっている方が、今の日本人には本当に増えているという印象を持っているのは私だけでしょうか?(それは舞台に関わらず、普段の日常の中からも多く感じられます)
日本人の体質なのでしょうか?
"時間と成績に追われる日常" の中で心にゆとりが無くなってしまっていて、
芸術も左脳(理屈)で見ようとするあまりに右脳が働かず、舞台などの芸術を「味わって観れない」という事なのかな~?と、私的には感じています。
「芸術は心のビタミンです。食べ物を摂ってもビタミンが無ければ身体には栄養が行き渡らないで病気になったりする様に、人間には生活の中に芸術が無ければ、心が病気になるのです」と説かれる方もいらっしゃいますね?
今の世の中に起きている事を観ましても、私も本当にそう感じます。
又、「芸術はお金にならないから不要だ!」という考えは、このビジネス大国日本では良く聞かれますが、そういう方達からは、人間の心に不可欠な心の潤いを感じた事はなく・・・、逆に何か淋しい印象を受けるのは私だけでしょうか?(;_;)
日本人は世界に類を見ないほど、美しい奉仕の精神に溢れた素晴らしい感性を根にお持ちの方も多いですし、又日本には日本の優れた芸術というものが沢山ございますので、
東洋の先進国として、もう少し自国・他国の文化・芸術にも国全体で理解を深めて頂きたいなぁ!と、芸術をこよなく愛する私は思っているのでございます。
☆_(_☆_)_☆
あと、日本の観客の方達に多い傾向としてもう一つ挙げられるのが、舞台を観て涙を流すほど感動していても、それを拍手で表す事に慣れていない方も多いという事でしょうか?
ヨーロッパのダンサー達は時々その観客の静けさにビックリして、その反応に大変戸惑う方も正直多いです。
(反応が無いというのは、彼等の国では「パフォーマンスが良くない」という意味になるからです)
ですので私が日本の観客の方達の癖・傾向を教えてあげると、皆安心・納得した様でしたが、
やはりそれは彼等に取っては「舞台慣れしていない(マナーを知らない)観客」というイメージを持たれる事にも繋がってしまうという事も知っておいて下さいね~!
ですので皆様、今後舞台をご覧になった時に、もし感動された時は遠慮なく拍手で表して下さいませ~!
それが演じる側には「お客様に喜んで頂けた♡」という、彼等の一番の励み・喜びになるからです♫
ちなみにロシアでは普通の一般市民の方達の生活の中に、ごく当たり前に高い芸術・文化が日常の中にあるので、お客様の目も非常に肥えていらっしゃいました。
(その観客層は男性の方も大変多く「老若男女問わず」ですので、いかに芸術が一般市民の生活の一部に自然に溶け込んでいらっしゃるのかが窺えます)
ですので、その本物を見抜く眼を持つ観客が常に芸術を楽しみながら、暖かく、又時に厳しい眼でもってダンサー達を観ているので、
それが逆に質の高いダンサーを育ててもいるという相乗効果にもなっていて、「何だか素敵な関係だなぁ!」と感動した私です。☆彡
(感動の涙~~~ ウルウル・・・ (笑))
このコラムの執筆専門家
- 大園 エリカ
- (東京都 / クラシックバレエ教師・振付家)
- 舞踊家(クラシックバレエ) 元プロバレリーナ
natural & elegance
長年プリマとして国内外で活躍。現役引退後は後進の指導とバレエ作品の振付けに専念。バレエ衣裳や頭飾りを作り続けて得たセンスを生かし、自由な発想でのオリジナルデザインの洋服や小物等を作る事と読書が趣味。著書に「人生の奥行き」(文芸社) 2003年