Blog201402、不動産法、借地借家法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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Blog201402、不動産法、借地借家法

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Blog201402、不動産法、借地借家法


[不動産法]
澤野順彦『不動産法の理論と実務(改訂版)』(商事法務、2006年)

宅地建物取引業法のクーリング・オフ
(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
第三十七条の二  
宅地建物取引業者が自ら売主となる、宅地又は建物の売買契約について、
当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下「事務所等」という。)以外の場所において、
当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、
次に掲げる場合を除き、
書面により、
当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
一  買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したとき。
二  申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。
2  申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3  申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4  前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。


[借地借家法]
借地借家法の条文
借地人の越境建築事例について解除の可否(最高裁昭和38年11月14日判決)
賃借した土地に不法投棄した産業廃棄物の撤去義務(最高裁平成17年3月10日判決)、


今月は、借地借家法の条文を読みました。
借地借家法
(平成3年10月4日法律第90号)
最終改正:平成23年5月25日法律第53号

 第1章 総則(第1条・第2条)
 第2章 借地
  第1節 借地権の存続期間等(第3条―第9条)
  第2節 借地権の効力(第40条―第16条)
  第3節 借地条件の変更等(第17条―第21条)
  第4節 定期借地権等(第22条―第25条)
 第3章 借家
  第1節 建物賃貸借契約の更新等(第26条―第30条)
  第2節 建物賃貸借の効力(第31条―第37条)
  第3節 定期建物賃貸借等(第38条―第40条)
 第4章 借地条件の変更等の裁判手続(第41条―第60条)
 附則

   第1章 総則

(趣旨)
第1条  この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。


借地人の越境建築事例について解除の可否
最高裁昭和38年11月14日判決
建物収去土地明渡請求事件
【判示事項】 土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地に越境建築をしたことが借地自体の用方違反になるとされた事例
【判決要旨】 建物所有を目的とする土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地にまで越境して建物を建築した場合、右越境建築が当該隣地における賃貸人の店舗経営上非常な支障をきたすなど判示のような事実関係のもとでは、右越境建築により、借地自体の用方違反があり、地主は、借地人に対して、催告したうえで、解除できる。
【参照条文】 民法541条、 民法616条、 民法594条1項
【掲載誌】  最高裁判所民事判例集17巻11号1346頁
【評釈論文】 法曹時報16巻1号118頁
 
        理   由

第1 賃貸借契約の催告解除
 Yは、建物所有を目的とする土地賃貸借の借地上に借地人の所有する建物が、隣接の賃貸人の所有地に越境して建てられている場合には、賃貸人は土地所有権に基づき、賃借人に対してその越境部分の土地明渡を求めて権利妨害を排除すれば足り、賃貸借の目的土地に直接関係なき右の理由を以って賃貸借契約の解除理由とすることはできないのに、原判決が単に右越境建築の理由を以って賃貸借の目的たる土地の用方違反であるから、賃貸借契約の解除理由たるを妨げないと判断したことは、理由不備の違法があると主張する。
 しかし、原判決は、
① 訴外Aが昭和26年以来Xらの先代Bより同人所有の本件土地15坪を賃借し、その借地上に本件建物を所有していたこと、右賃借範囲には、係争の越境部分2坪余の土地が含まれていなかったこと、訴外Aの本件土地賃借当初における右地上建物の坪数は10坪5合であって、同建物は係争の2坪余の土地の部分にはかかっていなかったこと、
② Bは昭和30年5月頃右貸地に隣接する自己所有の宅地内に家業のそば店舗を建築するため、その敷地を測量したところ、賃借人A所有の本件建物がその借地15坪の賃借範囲を越えB方敷地に原判示の如く2坪余越境して建てられていることを発見したので、Bは直ちに右Aに対し越境の建物部分の収去を申入れたこと、
③ 右越境の部分がB方店舗二階客座敷への昇降口建設のため絶対必要な場所であったので、その後も再三右2坪余の越境部分収去の申入れがBからAに対してなされたこと、
④ 特に昭和31年6月25日A側に立つ訴外C立会の上測量した結果、Cも越境の事実を認め、その旨がCからAに通告されたこと、
⑤ Bは翌6月26日付、同月27日到達の内容証明郵便による書面を以って、Aに対し同年7月20日までに本件建物の右越境部分を収去すべく、もし右期間内にその履行なきときは、本件15坪の土地の賃貸借契約を解除する旨の催告及び条件付契約解除の意思表示をしたが、Aはこれに応ぜず、右期間を徒過したこと、
⑥ Yは同年7月23日頃Aより本件建物を買受け、同年9月19日その所有権移転登記を経由したことを確定したのであって、
⑦ 以上の事実関係の下において考えるに、借地人Aの本件所有建物と地主Bの所有店舗とが右の如く極めて近接しており、本件借地上の借地人所有の建物の越境が地主Bの店舗経営上、非常な支障を及ぼすべきことの明白なこと、
右越境を目して結局本件借地15坪それ自体の用方違反、すなわち賃借人としての債務不履行ありというに妨げないとした原判決の判断は是認できる。
 そして、相当期間をもってする右用方違反の是正の催告、すなわち、越境建物部分の除去の催告とともにその除去を条件とする原判示賃貸借契約解除の意思表示は有効であり、従ってBとAとの間の本件土地賃貸借契約は右催告期間の徒過とともに解除されたのであるから、Yは既に消滅した賃借権の譲受をAと契約したにすぎないとした原審判断は、首肯できる。
第2 賃貸借契約解除後の建物買取請求権
 Yは、原審が右契約解除を是認したのは民法541条の解釈を誤まり、またYの本件建物買取請求権の主張を否定したのは借地法10条の解釈を誤った違法があると主張するけれども、右賃貸借契約解除が有効であることは第1点について説示したとおりであり、既に本件借地権消滅後に本件建物を買受けたYには、本件建物の買取請求権はない。

(注)ただし、類似の事案で解除を否定した下級審裁判例もある。
大阪地方裁判所昭和49年5月10日判決・判例時報774号107頁
建物收去土地明渡請求事件
【判示事項】 借地人が賃借地に隣接する賃貸人の土地に跨って建物を築造したとしても、両者の信頼関係を破壊するものではないとして、右契約解除の主張を排斥した事例。ただし、越境している部分については賃料が払われていないから、越境部分の賃料相当損害金の請求のみ認めた。
【参照条文】 民法541条、民法594条

(注)当職も、借地人が隣の地主の土地に越境している事例を扱った経験がある。しかし、裁判所の見解は、解除に否定的であった。
越境事案の解除のポイントは、以下のとおりと考えられる。
・越境が地主の知らない間に無断でされたこと、
・借地人は越境していることを知っていたこと、
・借地人が越境したことについて、やむを得ない理由がないこと、
・越境部分が借地部分の面積と比較して大きいこと(割合、面積の広さ)、
・越境部分について、地代が払われていないこと、
・越境されている隣接地の地主に具体的かつ多大な迷惑が生じていること、
・地主が黙認せずに、すみやかに是正を求め、是正されていない場合に催告解除していること


賃借した土地に不法投棄した産業廃棄物の撤去義務
最高裁平成17年3月10日、土地明渡請求事件
最高裁判所裁判集民事216号379頁、判例タイムズ1180号187頁

【判決要旨】 土地の賃借人が同土地を無断で転貸し,転借人が同土地に産業廃棄物を不法に投棄したという事実関係の下では,賃借人は,賃貸人に対して、賃貸借契約の終了に基づく原状回復義務として,転借人が不法に投棄した上記産業廃棄物を撤去すべき義務を負う。
【参照条文】 民法616条、 民法597条1項、 民法612条1項

1 本件は,Xらがその所有する土地(本件土地)をAに賃貸したところ,AがこれをBに無断転貸し,Bが同土地に大量の産業廃棄物等を埋めたことから,Xらが,賃貸借契約を解除した上,Aの連帯保証人であるYに対し,原状回復義務の不履行による損害賠償を求めた事案である。
 2 Xらは,本件土地を資材置場としてAに賃貸し,Yは,Aが賃貸借契約に基づき負担する債務につき連帯保証した。この賃貸借契約においては,無断転貸の禁止及び本件土地に産業廃棄物等を捨てないことが特約として定められていた。しかし,Aは,賃貸借契約締結の3日後,Xらに無断で本件土地をBに転貸した。そして,Bは,その後本件土地を産業廃棄物の処分場として使用し,本件土地には解体資材等の産業廃棄物が大量に投棄された。なお,AはBが本件土地に産業廃棄物を投棄するつもりであることは知らなかった。
 本件土地に産業廃棄物が投棄されていることを知ったXらは,本件賃貸借契約を無断転貸及び用法違反を理由として解除した。
しかし,Aは,本件土地を明け渡したものの、産業廃棄物を放置したため,Xらが,Aの保証人であるYに対し,賃貸借契約上の原状回復義務の不履行による損害賠償を求めたのが本件訴訟である。
 3 原審は,一般に,賃借人の連帯保証人は賃貸借契約の解除に伴う原状回復義務の不履行による損害賠償債務についても賃借人と同様の責任を負うとしながら,本件では,賃借人であるAは,Bが産業廃棄物を投棄することを前提として本件土地を転貸したのではないから,Bが単独で行った犯罪行為である産業廃棄物の投棄についてまで原状回復義務を負うものではないとして,Aの保証人であるYがこの点について責任を負う余地はないとし,Xらの請求を棄却した。
 これに対し,本判決は,不動産の賃借人は,賃貸借契約上の義務に違反する行為により生じた賃借目的物の毀損については,賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うのであるから,本件のように,賃借人が賃貸借契約上の義務に違反して土地を無断で転貸し,その結果転借人が本件土地に産業廃棄物を不法に投棄したという事実関係の下では,Aは,本件土地の原状回復義務として,産業廃棄物を撤去すべき義務を免れることはできないとの判断を示した。そして,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻した。
 4(1)一般に,賃借人は,賃貸借契約の終了に伴い目的物を返還するに際し,原状回復義務を負うと解されている。これは,明文の規定はないものの,民法616条の準用する民法597条1項の解釈として当然のことと解されている。
原状回復義務の内容及びその範囲については議論があり,通説は,賃借物が自然に又は使用収益の正常の過程において損傷した場合や,不可抗力により毀損したような場合には,これを現状のまま返還すれば足り,賃借人は原状回復義務を負わないと解している(『新版注釈民法(15)』302頁〔石外克喜〕)。しかし,少なくとも,賃借物の毀損について賃借人に帰責事由がある場合には,賃貸人の賃貸物の所有権侵害・賃貸借契約違反・不法行為に基づく損害賠償請求を理由として、賃借人が原状回復義務を負うことについて異論はない。
 これを本件について見ると,本件土地に産業廃棄物が投棄されたのは,Aが本件賃貸借契約上の義務に違反して本件土地をBに無断転貸した結果であるから,Aは,たとえBの産業廃棄物の投棄を予見していなかったとしても,原状回復義務を免れることはできないものと思われる。本判決は,ごく簡単な判示しかしていないが,このような趣旨でAの責任を肯定したものと考えられる。
(2)承諾のある転貸借の場合
転借人の行為につき賃借人がどの範囲で責任を負うかという点については,賃貸人の承諾を得た転貸借に関して、従来から議論がある。
大審院の判例は,転借人を賃借人の「履行補助者」類似の者として取り扱い,転借人の故意・過失を賃借人の故意・過失と同視するという理論構成により,転借人の失火により目的物が滅失した場合(大審院昭和4年6月19日・民集8巻10号675頁)や,船舶の賃貸借において転借人の過失により船舶が座礁難破した場合(大審院昭和4年3月30日・民集8巻6号363頁)につき,いずれも賃借人の損害賠償責任を認めている。
これに対し,学説は,大別して、以下の3つに分類できる。
[A]大審院判例に賛成する説(柚木馨・高木多喜男『判例債権法総論〔補訂版〕』95頁等)と,
[B]これに反対し,賃貸人の承諾を得た転貸借においては,賃借人は転借人の選任・監督に過失がある場合にのみ責任を負うとする有力説(我妻栄『民法講義Ⅳ』109頁,同「履行補助者の過失に因る債務者の責任」法協55巻7号1314頁等)、
[C]承諾を得た転貸借の場合を履行補助者の問題とは切り離し,民法613条の解釈問題として、賃借人は賃借物の使用収益に関する転借人の過失について担保責任を負うと考える説も有力である(加賀山茂・阪法103号113頁,平井宜雄『債権総論』86頁)。
(3)無断転貸の場合
 しかし,本件のように無断転貸がされた場合には,賃借人は,転借人の行為につき,無断転貸という自らの義務違反が招いた結果として当然に責任を負うと解するのが自然であるように思われ,この場合には,特に履行補助者という概念を持ち出すまでもなく,賃借人の責任を肯定することができると考えられる。本判決も,このような趣旨で,履行補助者の概念を持ち出すことなく,Aの責任を肯定したものと解される。
 5 本判決は,特に目新しい判断を示したものではないが,賃借人が負う原状回復義務の範囲について判示した最高裁判例として参考になる。