第3 事業承継における後見制度の活用方法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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第3 事業承継における後見制度の活用方法

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第3 事業承継における後見制度の活用方法

現経営者は、判断能力が十分であるうちに、後継者と考えている者を受任者として任意後見契約を締結し、自身が考える事業承継方法を伝えておくということが考えられます。そうしておけば、万が一、自分が事業承継対策を行うことができなくなったとしても、後継者によって事業承継が行われるからです。

なお、会社法上の株主総会での議決権行使のような事項も、私見によれば、任意後見契約の対象となると考えられます。なぜなら、議決権行使のような共益権の行使の場合であっても財産権の行使といえるからです。したがって、本人の判断能力が低下してしまったとしても、任意後見契約の対象として定めておけば、議決権行使を任意後見人が行うことで、会社の支配権を盤石とすることができます。

 また、任意後見制度の利用は早期に検討すべきでしょう。なぜなら、判断能力が低下してしまった段階になってしまうと、多くの場合、法定後見制度しか利用できなくなり、強大な権限を有する後見人の地位をめぐって、親族間で争いになる可能性が大きいためです。

 また、法定後見制度とは違い、任意後見制度であれば、例えば、長男との間では財産管理を委任する任意後見契約を、長女との間では療養看護を委任する任意後見契約をそれぞれ締結することが可能となります。そのため、経営者の意思ができる限り尊重されるといえます。

 後継者と考えている者を任意後見人にしなくとも、経営者が信頼する第三者を任意後見人にして、事業承継を遂行してもらうことも可能です。

 その際には、第三者の権限濫用防止のため、財産管理等契約での代理権を一定範囲に制限する等、その内容を工夫する必要もあるでしょう。代理権の範囲は、登記事項の一つとされています(後見登記等に関する法律5条4号)。

 注意すべき点としては、任意後見制度は本人の自己決定権の尊重という観点から、任意後見人に同意権・取消権が与えられていませんから、任意後見契約の効力が発生した後においても、本人のした行為は取り消すことができません。したがって、本人が誤って財産処分をしてしまった場合、それを後に任意後見人が取り消すことはできませんから、そのような危険がある場合には、法定後見制度の利用も検討する必要があります。

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