- 松岡 在丸
- 松岡在丸とハウジング・ワールド
- 東京都
- 建築プロデューサー
対象:住宅設計・構造
海外先進国の住宅と日本の現代住宅を比較して、大きく異なるポイントの一つに、トイレの考え方があります。
住む人すべて、およびゲストも含めた誰もが必要とするトイレ。日本の家づくりでは、多くがトイレを「パブリックスペース」として考え、玄関の近くに間取りするケースが多いのですが、実際にはもっともプライベートな空間であるはずではないでしょうか。
トイレ空間を見ると、その家のライフスタイルのセンスが見えてきます。トイレが使いやすいというのはとても大事で、飲食店でもコンビニでも、トイレが狭くて使いづらくて汚いというだけで客足が遠のくほどです。
賢いトイレの仕様について、考慮してみましょう。
家族のトイレを「公衆トイレ」にしてはいけない!
冒頭で述べた通り、トイレはプライベートな空間。もし玄関付近にトイレがあったら、どういうことが生じるでしょうか。急なゲストが玄関先に居たら? トイレに出入りしやすいですか? 音の問題は? 匂いの問題は?
こう考えてみると、トイレは玄関付近よりも、玄関からもっとも遠く、家の奥に位置しているべきなのは明らかです。
欧米では、トイレはベッドルームの数に比例し、夫婦室とそのバスルーム、子供部屋とそのバスルーム、という間取りがなされています。そしてゲスト用のトイレがあります。
近年は2階建てであれば1階と2階にそれぞれトイレを設けるケースが増えていますが、一つは家族用、もう一つはゲストも使える、という間取り配置を考えておく必要があります。
トイレを階段の下に置かない!
トイレは、もっともプライベートであるとともに、もっともリラックスできる空間である必要もあります。トイレを「無駄なスペース」として考えてはなりません。階段を昇降する足音が響いたり、天井が狭くて圧迫感や閉塞感があるトイレはよくありません。狭い空間で空気質も悪くなり、掃除のしやすさという観点からも衛生面で問題が生じやすくなります。
トイレは広くて明るく、落ち着けるスペースに作るほうがよいのです。
賢いトイレ間取り
例えば、ゲストが宿泊する部屋を設けたいと思います。その部屋は将来、介護室としても使えるので、1階に設けます。リビングに併設し、奥にトイレを設けます。家族専用のトイレは2階にありますが、普段の生活の中で、ゲストルームはリビングの延長として開放し、そのトイレを使うことができるようにします。
ゲストが宿泊しているときは、家族は2階のトイレだけを使います。ゲストは、遠慮なくゲストルームのトイレを使えます。とても泊まりやすく、居心地のよい空間となるでしょう。トイレ付きのゲストルーム、というわけですね。
他にも、手洗いシンクを設置すること、広いスペースなら介護が必要な時にも使いやすいこと、引き戸にすることでバリアフリーでスペースを確保しやすいことなど、様々なポイントがあります。ぜひともしっかりと考え抜いて、使いやすいトイレがあるいい家づくりを目指してください。
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