対象:事業再生と承継・M&A
後藤 義弘
社会保険労務士
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ご質問ありがとうございます
若宮先生もご指摘の通り、仮に創業者から全株式を買い取ったとしても、借入金がなくなるわけではなく、お話のように株式譲渡でMBOを実行したとしても
(1) 「株式」の買い取り
(2) 「借入金」の返済
ダブルで資金を確保しなければなりません。
したがって、お伺いする限りでは、多額の資金が必要となるMBOによる経営承継は現実問題非常に困難な状況と言えるのではないでしょうか。 (まずは「借入返済」と「MBO」を分けて考えた方がよいと思います。)
業績が上向いているとのお話なので、まずは創業者と話し合いのうえ、会社の収益から合理的な金額を分割弁済していく計画を立てることができないか検討・交渉の余地があると思われます。
ここでお話の範囲で取り得る選択肢を検討してみましょう。
*''■ オプション-1''
''リスケジュール、もしくは合理的な返済計画のもと分割弁済を交渉する''
''【解説】''
創業者と会社との間に、返済や金利などの条件について明確な取り決めがある場合は、今後約定どおりの返済が厳しいという事情であればリスケジュールを、なければ今後の業績を見据えた合理的な返済計画を立て返済していく交渉ができないかです。
*''■ オプション-2''
''「借入金」の一部(または全部)を「株式」に転換し借入額を圧縮、その代償として、創業者には優先配当を受ける権利の付いた株式を与えるなどの策を講じ、相互の利益調整を図り納得性を高める。''
''【解説】''
これは、いわゆる「デット・エクイティ・スワップ」((「借入」を「資本」に振替えて、返済義務(債務)の免除を受ける手法))と呼ばれているスキームで、金融機関の不良債権処理などにも使われています。
例えば、この手法を使って借入額を圧縮し、会社の負担を軽くしてもらう代わりに、あらたに創業者に交付する株式に、配当を優先的に与える機能を付けます。
補足
このように、経済的インセンティブを高める「株式カスタマイズ」を組み合わせ、配当により長期的に資金を回収していく途を提案するわけです。 (もっとも約束どおり借りたお金を返せと言われればそれまでですが…)
''『株式カスタマイズ』 とは? ''
ただ、お話からは先方の争う姿勢がうかがえることから、以上2つのオプションが現実的なものと言えるかどうかわかりません。 (事情によっては、また違った対応策も考えられますが)
いずれにしても、双方の合理的な利益調整の問題になってくると思われることから、専門家など第三者を介在させるなど、まずは今一度冷静な話し合いの機会を持つことがが必要ではないでしょうか。
**''★ ご参考 : 金融機関等からのMBO資金調達の可能性''
''【民間金融機関】''
事業承継資金のニーズに対し、一般に民間金融機関のハードルは高く、調達は困難と思われます。
''【ベンチャーキャピタル (以下VC)】''
VCはIPO(株式公開)を前提とした資金供給ですから、今後〜さんの会社が上場をお考えということであればまだしも、単なる事業承継資金としてのVC活用も困難ではないかと思われます。
''【中小企業投資育成会社】''
同社は株式の上場や転売による利益を重視するVCとは違って、中小企業の安定株主となって、自己資本の充実を側面支援することを趣旨とする政策金融機関です。
場合によっては、直接同社が株主から株式を買い取ることもあるようです。 検討の余地があるかもしれません。
ご質問ありがとうございます。
今後ともAll ABout ProFileをよろしくお願いします。
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