喉の炎症又は薬の副作用が原因?鉄欠乏や自律神経失調の可能性も - 吉野 真人 - 専門家プロファイル

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対象:体の不調・各部の痛み

喉の炎症又は薬の副作用が原因?鉄欠乏や自律神経失調の可能性も

2017/12/22 16:09

風邪を引いた後に、喉の違和感や嘔気、食欲低下などの症状に悩まされている模様で、お見舞い申し上げます。風邪に関連して、このような症状が発生するケースは時々見受けられますが、それには幾つかのパターンが考えられます。

先ず考えられるのが「喉の炎症」です。風邪に伴い咽頭や喉頭、扁桃などに炎症が波及すると、咽頭痛や声嗄れ、扁桃肥大などの症状を招きますが、はっきりした痛みなどがない場合でも、漠然とした喉の違和感を感じる事は少なくありません。また喉の炎症が消化器系への刺激となって、吐き気や食欲不振を催す事もあり得ます。
次に「風邪薬」が関与するケースも考えられます。多くの風邪薬には、鎮痛解熱剤が含まれています。風邪に伴う発熱や頭痛、喉の痛みなどの症状を和らげる目的で内服するのですが、副作用として胃炎や胃潰瘍などを併発する場合が多々あります。そのような場合には、嘔気や食欲不振、喉の違和感などを伴うかも知れません。

炎症と風邪薬のいずれが主因であるにせよ、風邪そのものがすっかり治ってしまえば、このような喉の症状も消え去るのが普通です。しかしながら、このような症状が遷延する、或いは長期にわたって出没するような場合には、風邪とは別の要因を考える必要が浮上してきます。
そのように風邪とは別のレベルで、遷延あるいは出没する喉の不調を招く原因としては、どの様なものがあるのでしょうか。

先ず考えるべきは喉の「局所的」な異常です。扁桃炎や咽頭・喉頭の腫瘍性病変、アデノイド、甲状腺腫瘍などです。これらの疾患は耳鼻咽喉科に於いて診察、検査を受ける事で診断されます。もし喉の異常が続く場合、一度は耳鼻咽喉科を受診した方が良いでしょう。
とはいえ耳鼻科で詳しく調べても、特段の局所的な異常が見つからない場合が多いのも事実です。意外と多いのは「全身的」な要因が存在するケースです。

全身的な要因として、女性にとても多いものに「貧血・鉄欠乏」が挙げられます。健診などで貧血がないという方であっても、とりわけ20代から40代にかけての女性には、鉄欠乏がたいへん多く見受けられます。医学用語では「潜在性鉄欠乏」と呼んでいます。
鉄欠乏では貧血様症状など、様々な体調不良が発生し得ますが、症状の一つに喉の違和感や嘔気があります。鉄欠乏によって咽頭や食道の粘膜が菲薄となり、刺激に敏感となるためです。これをプランマー・ビンソン症候群と言います。反対に喉の症状が契機となり、貧血や鉄欠乏が判明するケースもあります。

もう一つの全身的要因として「自律神経失調」が挙げられます。自律神経失調では、めまい、立ちくらみ、不眠、全身倦怠感、動悸、息切れ、不眠など様々な症状が知られていますが、比較的まれな症状として、喉の違和感や嘔気が挙げられます。
自律神経失調症で喉の症状が出現するのは、喉の粘膜には自律神経を含め末梢神経が密に分布しており、自律神経バランスの乱れが影響しやすい、などの事情のためです。

次に、喉の違和感や嘔気にどう対処するかについて説明します。違和感などの症状は前述のように、幾つかの原因パターンが考えられますが、そのパターンによって対処法にもバリエーションが存在します。

風邪症状の一環などのため、俄かに喉の違和感や嘔気が出現した場合には、応急的に鎮痛解熱剤(ロキソニン等)や胃粘膜保護剤(ムコスタ等)、場合により制吐剤(ナウゼリン等)を内服するのが教科書的な対応です。上述のように、風邪が原因という場合には、風邪の治癒とともに、喉の症状も自然に消退するのが普通です。
既に鎮痛解熱剤を内服中で、その副作用が疑われる場合には、むしろ鎮痛解熱剤を一たん中止してみるのも一つの方法です。薬の副作用ならば、その中止によって副作用もやがて消失するのが一般的です。そして風邪症状の場合と同様、胃粘膜保護剤の服用が有効かと思います。

一方で、喉の症状が遷延または長期に出没するような場合には、どのような対処が考えられるでしょうか。腫瘍などの局所的な異常の場合には、手術などの専門的な治療が必要となる場合も少なくありません。前述のように、耳鼻咽喉科などへの受診が必須です。
貧血や鉄欠乏、自律神経失調など全身的な要因が濃厚な場合には、漢方薬や栄養療法などの出番となります。例えば、喉の違和感や嘔気に効果的な漢方として有名なものに「半夏厚朴湯」があります。なお漢方薬は体質によって現れる効果に差があり、人によっては「加味逍遥散」などの方が効果的な場合もあります。

貧血や鉄欠乏に対しては、鉄分やビタミンB群、ビタミンC、タンパク質など各種栄養素の補給が望まれます。病院では貧血や鉄欠乏に対し、鉄剤の処方がよく行われますが、鉄だけ単体で補給しても、効果は限定的です。造血に関わる栄養素は鉄だけではありません。ビタミンB群など各種の栄養素をバランスよく補給して初めて、安定的に効果を発揮するのです。
具体的にこれらの栄養素を、どのように補給すれば良いのでしょうか。基本的には食事の工夫が求められますが、良質なサプリメントを活用するのも良いでしょう。鉄分やビタミンB群、ビタミンCなどを豊富に含む食材には様々なものがありますが、例えば豚肉や卵、赤身の魚、緑黄色野菜、各種果物などがお勧めです。

栄養補給以外の取り組みとしては、体の「保温」などがお勧めです。風邪をひいている時でも、ひいていない時でも、腹部を中心に体を温める事は、とても大切です。風邪で熱がある時は、頭部や頚部は冷やしても結構ですが、胃腸のある腹部は冷やさないようにしたいものです。
胃腸は「免疫の中枢」と言えます。免疫細胞の約7割は腸管内に分布すると言われるほど、免疫力を維持するに当たって腸内環境はとても重要です。そして胃腸は低温に弱いという特徴があります。腹部が冷えていると、風邪が治りにくい傾向があるのはそのためです。

自律神経失調や貧血、鉄欠乏など全身的な要因が目立つ場合でも、日常的に腹部を温めることが大切です。自律神経は全身に張り巡らされていますが、腸管にとりわけ密に分布しています。腸は免疫の中枢であると同時に「自律神経の中枢」でもあるのです。
また腸内環境が改善ずると消化・吸収の効率が上がり、鉄やビタミンB群など各種栄養素の体内への補充も促進します。

なお、栄養バランスの整え方や保温方法、その他の治療法や健康法に関しては、他のQ&Aやコラム、或いは私のホームページ(2本あります)などに数多くの文章が掲載されていますので、ぜひ参考になさって下さい。

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この回答の相談

気管支炎 嘔吐恐怖症 眠れない

心と体・医療健康 体の不調・各部の痛み 2017/12/17 01:52

三日前に気管支炎の診断を受けて薬を貰いました。その日の夜は、薬のお陰で咳もそんなに出ず、眠れました。
次の日、起きてみると咳や痰はないものの、喉に異物感があり、吐き気が出てきました。
食欲… [続きを読む]

来夢★さん (新潟県/26歳/女性)

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