医療法人化のメリット・デメリット - 医療経営戦略 - 専門家プロファイル

河野 理彦
こうの法務事務所 行政書士
千葉県
行政書士

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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医療法人化のメリット・デメリット

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お医者さまにとって医療法人化は、「時機がきたら」とは思いつつ、そのメリットやデメリットについては漠然としたイメージという方が少なくないのではないでしょうか。一般的なレベルに留まりますが、個人医院と医療法人との違いについて書いてみたいと思います。


● 医療法人のメリット

もっとも気になる点としては、「税金的にどうか」という点ではないでしょうか。
ご承知のとおり、平成19年の第5次医療改正によって法人化のメリットはますますなくなってしまいました(改正内容については、ここでは割愛させていただきます)

 医療法人制度≪医療法第五次改正≫の主な改正点について

しかし、個人形態との比較で考えれば、やはり法人形態には大きなメリットがあります。売上げが伸びてくれば、それに伴って当然税金の割合も高くなりますが、法人であれば2段階のみの設定となっています。
法人税率ですが、ここは行政書士なのでザックリいかせていただきますが、平成23年4月1日以降にスタートした年度については25.5%です。これに対して、個人の場合は課税所得が1800万円を超えると40%ですから、全然違いますよね。
確かに、法人の経営者にとっては二重課税の問題がありますが、個人の場合は問答無用で4割持って行かれてしまいます。法人化することによって、節税のための手段も出てくるわけです。
税金面では、やはり医療法人のほうがメリットがあるということになります。

では、医療法人最大のメリットとは何かというと、医業経営と家計の分離が図れる点だと考えています。
医療法人は医療法人、個人は個人の財布に分けてられるというのは、予想以上にメリットになります。特に金融機関などに対しては、法人という信用が高まり、結果として経営の安定化につながります。
そして、法人役員となって役員報酬を得られますので、収入の安定と分散も図ることができます。しっかり考えて采配をふるえば、もちろん節税になります。

退職金も受け取ることができますし、これは費用にすることができます。
法人契約の生命保険も活用できます。これも全額ではありませんが費用にすることができます。
こうした制度は個人では活用できませんので、法人化のメリットといえます。

また、社会保険診療報酬について、個人の場合は源泉徴収されますが、法人の場合はされませんので、全額回収することができます。

個別具体的にはそれぞれ検討も必要でしょうが、医療法人化することで上記のようなメリットが期待できます。


医療法人のデメリット

一方、メリットばかりではなくデメリットも確認しておきましょう。

まず、自由に使えるお金が減ると考えていただいたほうがよいでしょう。これまでと異なり、売上げの中から役員報酬を受け取ることになりますので、使えるお金はこの範囲ということになります。
また、交際費も、税法上経費として認められない部分が出てきますので、注意が必要です。

医療法人設立に際して、様々な出費がかさむことも見込んでおかなければなりません。
それから、個人時代に運転資金として借り入れた分は、法人に引き継ぐことができません。この点にもご注意ください。

この、法人化に際してのプランニングは、重要なテーマです。
瞬間的に、単純に切り替わるというものでは決してありません。事前に準備することはもちろん、これまでと考え方を変える必要もあります。 

さらに、医療法人化後、個人のときにはなかった事務量が増えることになります。

ただ、上記2点については、専門家を活用することで回避することはもちろん、より効果を上げることも可能です。顧問税理士にご相談いただくことはもちろん、セカンドオピニオンとしてご相談いただければと思います。税理士の先生からもご相談をいただき、提携させていただいています。


医療法人化のタイミング

さて、メリットとデメリットを検討した結果、今はまだ医療法人とするよりも個人でよいという場合もあると思います。では、いつ頃、またはどのような変化があったときに医療法人化を(再)検討すべきでしょうか。

もっとも目安となるのは、やはり売上げだと思います。税率の点で考えても、ある時点から法人のほうが節税になることは当然予測のつくところです。
しかし、「売上げがいくらになったら医療法人にしたほうがよいのか?」となると、明確な数字があるわけではありません。
内訳はもちろん、お医者さまを取り巻く状況、そして、将来的な見通し・予測もしなければなりません。 

また、最初に検討するタイミングとしては、独立開業から2年が目安といえます。
1年目の実績と2年目の傾向を見て、検討してみましょう。 手応えから、今後の方針を見極め、それに伴って医療法人として続けていくかを判断できます。

見通しとして、10年後もこの場所でと考えられるのであれば、それもシグナルと思ってよいでしょう。
法人設立の認可の際、施設の使用権原が10年ほど見込めることが求められています。数年間を振り返り、軌道に乗りつつあるのであれば、より安定させるべく医療法人とすることも選択肢です。

複数の診療所等を解説していくのであれば、これも医療法人化のタイミングです。
お子さんが開業するとか、2km以上の移転かで迷われた場合、医療法人という選択肢もありです。

いくつか羅列しましたが、どこかのタイミングで医療法人への移行はするほうがよいのはいうまでもありません。その際には、税金面のみならず、考慮すべきポイントはいくつもありますので、「どうかな?」というときにはご相談してみてください。


以上、なかなか難しい問題ではありますが、お悩みでしたらいつでもお気軽にどうぞ。


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