経営革新計画をつくって資金調達! - 財務諸表・事業計画書 - 専門家プロファイル

榎並 慶浩
リーンアカウンティングジャパン 代表
東京都
税理士

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対象:財務・資金調達

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経営革新計画をつくって資金調達!

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経営革新

「経営革新計画」ってご存知ですか?

ハッキリ言って、知っているか知らないかで資金調達の優位性が大きく変わる制度です。


とはいえ、知らない人にとっては、いきなり「経営革新計画」と言ってもチンプンカンプンですよね。

それが資金調達にどうつながっていくのか。

まずは、「経営革新計画」とは何なのかを説明します。


詳細な説明に入る前に、「経営革新計画」をざっくり一言で表すと、

「政府系金融機関の低利融資や保証協会の保証枠倍増などの優遇を受けられる経営計画で

国が認めたもの」

です(一言にしては長い?)。


かなり乱暴な言い方ですが、イメージはそんな感じです。

では、具体的な説明に入りましょう。


経営革新計画を分解すると、「経営革新を実施するための計画書」ということができます。

この「経営革新」とは、中小企業新事業活動促進法という法律に「事業者が新事業活動を行うことにより、

その経営の相当程度の向上を図ること」という定義がなされています。

この法律に基づき、中小企業が経営革新に取り組むことを国(具体的には経済産業省中小企業庁)が

支援するというものです。


つまり、中小企業が新規事業によって収益力を向上させる計画を作成し、その計画を国が承認

(実務的には都道府県知事が承認)してくれれば、様々なメリットを受けられるのです。


これだけだと、

・新事業活動ってどういうもの?

・経営が相当程度向上って具体的には?

・様々なメリットって何?

といった疑問が出てきますね。

これについても説明があります。


〈新事業活動とは〉

新商品の開発又は生産

新役務の開発又は提供

商品の新たな生産又は販売の方式の導入

役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動


〈経営の相当程度の向上〉


3~5年で計画を作成

付加価値額又は一人当たりの付加価値額の伸び率が年率3%以上(⇒3年計画だと9%以上)

経常利益の伸び率が年率1%以上(⇒3年計画だと3%以上)

※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

※一人当たり付加価値額=付加価値額/従業員数

※経常利益=営業利益-営業外費用(支払利息等)


〈受けられる支援措置〉

税の特例措置

保証・融資の優遇措置

投資・補助金の支援措置

販路開拓の支援措置

その他の優遇措置(特許関係料金減免制度)


以上、列挙しましたが、詳細は書ききれないので割愛します。

さらに深く知りたいという方は中小企業庁のホームページをご参照ください。

(http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/index.html)

本コラムでは、特筆すべき点に絞って説明を加えることとします。


まず、新事業というと、何か革新的な事業、イノベーションを起こすようなイメージを想起させてしまう

かもしれませんが、本制度ではそこまで求めていません。

新商品の開発は製造業などはイメージしやすいと思いますが、既にある技術で新しい商品を作る

ということになります。

新商品といっても、特許を取っていることが求められているわけではありません。


新役務はサービス業における新たなサービス形態ですね。

例えば、来店型のサービスを出張型にするなどです。

商品やサービスの新たな生産方式・販売方式・提供方式などは、新しい商品やサービスである必要すら

ありません。

工程の見直しや販売方式の変更、サービスの多角化などを行うことを指しています。

 

こうして見ると、自社内の既存の商品やサービスラインなどを見直すことによって、何か該当するものが

生じることは十分にあり得ます。

また、他業種のノウハウなどを組み合わせてみると、以外な発見があるかもしれません。

そして、これらの新事業は、他社が全くやっていないものを求めているわけでもありません

広く普及しているものであると承認されない場合がありますが、世の中の新しいビジネスというものは、

大半が既存の組み合わせだったりします。

要は、自社にとって新しいことを実施し、企業力(≒収益力)を強化していくことを示せればいいのです。


受けられるメリットについてもいくつかありますが、この中で特筆すべきは、「保証・融資の優遇措置」です。

保証とは、信用保証協会による債務保証を指しますが、これが経営革新計画の承認を得ると、保証額が

2倍になる(!)というものです。

普通保証であれば通常2億円の限度枠ですが、これが4億円になるわけです。

無担保保証であっても、通常8,000万円が1億6,000万円になるわけです。

※あくまで、上限の話ですので、企業の与信状況などで実際の保証額は変わってきます。

融資というのは、政府系金融機関による低利融資が受けられるというものですね。


ただし、計画の承認を得られたからといって、必ずしもこれらの優遇措置が受けられるというものではない

という点には注意が必要です。

あくまで国は計画を承認するだけで、承認後に金融機関の審査が必要になりますので、計画の申請に

合わせて金融機関への相談を並行して行う必要があります。

また、調達した資金については資金使途が新事業に基づくものに限定されており、かつ、最初に全額融資

されるのではなく、必要に応じての融資となる点についても、留意しなければいけません。

したがって、資金繰りが厳しいからといって、経営革新計画を利用して運転資金を調達しようと思っても、

それは難しいということになります。


とまあ、最後に厳しいことを書きましたが、先行き不透明な環境において生き残っていくためには、

常に何らかの経営革新が必要になってくるのは自明の理です。

そもそもこの制度がなくても、経営計画(事業計画)は作成すべきですし、そこに新事業の構想が

あるのであれば、この制度を使わない手はないでしょう。

新事業の構想がない場合でも、経営革新計画に挑戦すれば、計画を作成する過程で見えてくるものが

あるはずです。


中小企業庁による経営革新支援は「新事業に取り組もうとする企業」を支援する制度であり、

すべての中小企業を無差別に救おうというものではありません。

つまり、国は「頑張る中小企業」を積極的に支援する方針なのです。

ある意味、選択と集中が行われているわけですね。

どれくらい集中されているかというと、、、



中小企業の1%程度です。



平成24年3月末時点で約5万社の承認実績がありますが、全国の中小企業の数が約400万社に対して

およそ1%程度にすぎないわけです。


99%の企業はまったく活用できていないということになります。

まだまだ認知度が低いということもあるかもしれません。

知っていたとしても、制度の実態が分からないために利用されていないということもあるでしょう。


これに対し、平成24年8月に「中小企業経営力強化支援法」というものが施行され、中小企業に対して

専門性の高い支援事業を行う「経営革新等支援機関」を認定する制度が創設されました。

税務、金融、財務に関する知識やノウハウが一定レベル以上の個人・法人・金融機関等を、

中小企業に対する支援機関として認定するものです。


これまで知られていないか実態がよく分かっていなかった経営革新計画も、

おそらく脚光を浴びてくるようになるでしょう。

支援機関の数も平成25年2月時点で5,000を超えてきましたので、身近に支援機関の認定を受けた

個人や法人、金融機関等がいれば、そこから情報を入手できるようになります。


本コラムをお読みになった方は、すでに知らないものではなくなりました。

勝手ながら、イメージもつかんでもらえたのではないかと思っています。

今からでも遅くありませんので、是非「経営革新計画」の作成にチャレンジしてみてください!


〈最後に〉 

リーンアカウンティングジャパンも経営革新等支援機関の認定を受けておりますので、

ご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せください。

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