「延納」と「物納」(2)~「延納」について

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公開日時
2011/10/28 10:04

皆さん、こんにちは。

 

前回のコラムで予告した通り、今回は「延納」制度を受けるための要件・その手続き等について、詳しくお話したいと思います。

 

延納の要件は以下の通りです。

(1)相続税額が10万円を超えること。

(2)金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。

(3)延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。(延納税額が50万円未満で、かつ延納期間が3年以下である場合を除く)

(4)相続税の申告期限までに、延納申請書及び担保提供関係書類等を提出すること。

 

要件(2)でいうところの「納付を困難とする金額」は、『延納許可限度額』です。

その算出方法は、以下の通りです。

 

延納許可可能額=納税額-(現金+預貯金+換価の容易な財産の価額)-({1ヶ月の生活費×3}+事業に当面必要な運転資金)

 

この計算方法を見ても、「納付を困難とする金額」の設定がいかに厳しく設定されているかが分かります。

3ヶ月分の生活費と個人事業をしている場合の当面の運転資金を除いた以外は、相続財産だけでなく納税者固有の財産も含めた現金、預貯金、換価の容易な財産(有価証券等)の価額に相当する分は「現金一括払い」、延納を認めない、つまりは、換金しやすいものは全部換金して相続税の一括納付分に回しなさいということですね。

そして、延納申請書に添付して「金銭納付を困難とする理由書」を作成しなくてはなりません。

 

次に、延納の主な手続きの流れです。

上記の要件(4)にもあるように、延納の申請は、相続開始(被相続人の死亡)から(もしくはその事実を知ってから)10ヶ月以内に、以下の書類を揃えて提出します。

○相続税延納申請書

○各種誓約書

○金銭納付を困難とする理由書(説明資料を含む)

○延納申請書別紙(担保目録及び担保提供書)

○不動産等の財産明細書

○担保提供関係書類

○(担保提供関係書類が提出できない場合)担保提供関係書類提出期限延長届出書

 

一度の届出によって延長できる期間は3ヶ月が限度となります(3ヶ月以内であれば、何日でも可能)。再延長の届出は何回もできますが、最大で延長できる期間は6ヶ月以内となります。

延納の要件を満たしていて、延納担保財産が適当だと判断されると、原則として申請から3ヶ月以内に延納が許可され、「相続税延納許可通知」が送付されます。

 

担保不動産についての抵当権設定には、銀行借り入れのような登録免許税の負担は必要ありません。

建物が担保の場合には、当該建物の火災保険についての「質権設定承認請求書」を提出し、質権設定をしなくてはなりません。

 

担保として提供できる財産の種類は、

1)国債及び地方債

2)社債

3)土地

4)建物

5)その他、一定の財産等

 

となります。

「延納」を選択したとしても、途中で納付が困難になった場合には、残りの未納付分を「延納」から「物納」に切り替えることも可能です。

次回は、「物納」について詳しくお話したいと思います。

どうぞお楽しみに。

このコラムの執筆専門家

(東京都 / 税理士)

フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士

不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。

フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。

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