阿部 龍治
アベ リュウジグループ
マッキーの『誰でもわかる不動産塾』 第3回
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*** どうなる!? オフィスマーケットの今後 その3 ***
前回はオフィスビル空室率改善の真相を探りました。今回は、第1回で触れた「オフィスビルマーケットはますますグローバル化し当面は安泰」という見方を、別の視点から検証します。
2020年の東京五輪開催時までに多くのグローバル企業が東京に集まってくることは想定できるのでしょうか。大手町、丸の内、日本橋、品川、渋谷、新宿、多くの再開発事業で、東京の「グローバル化」がテーマとなり、国際金融センターの設立構想がぶち上げられています。
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このなかで日本の地位は経済規模では相変わらず世界第3位としての影響力は変わらぬものの、地政学的には世界の中での「極東」であるのと同じく、日本はアジアにおける「極東=ファーイースト」なのです。なぜならシンガポールから主要なアジア都市には4時間以内でアクセスが可能ですが、シンガポールと東京は飛行機で7時間半という「離れ小島」なのです。
仮に国際金融センターの地位が確立できたとしても、各デベロッパーの夢をすべてかなえるために東京に3つも4つも建設することはあまりに現実離れしているといわざるを得ません。
結果として、国内需要が大きく改善しないかぎり、これから大量に完成する「航空母艦」クラスのビルの甲板を埋めるテナントは、既存のオフィスビルから「狩って」こざるを得なくなる可能性が高いのです。(つづく)
牧野 知弘(まきの ともひろ オラガ総研株式会社 代表取締役)
東京大学経済学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。「日本橋コレド」「虎の門琴平タワー」など数多くの開発を手がけた後、三井不動産ホテルマネジメントに出向しリノベーション、経営企画、コスト削減、新規開発業務に従事。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し東京証券取引所REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野およびオラガHSC設立。2015年オラガ総研設立。テレビ、ラジオでの穏やかな語り口に定評がある。
一昨年、東京都港区虎ノ門エリアで、環状2号線の新橋、虎ノ門間が開通して話題になりました。東京都はこの新橋と虎ノ門を貫通するこの通りを「シャンゼリゼ通り」として潤いのある街づくりを行っていくことを標榜しています。このエリアの完成イメージについては港区のホームページなどでも垣間見ることができますが、イメージパースを見る限りでは、「シャンゼリゼ」というよりも、都内にもう一つ「大手町」をつくるかのような大型オフィスビルの「羅列」に終わっています。
大規模なオフィスビルも一定数は必要ですが、現在計画されている日本橋や大手町、渋谷、新宿といったエリアごとの再開発計画は、それぞれのエリアを本拠地とするデベロッパーによる「国盗り物語」にしか見えず、各社が掲げる街並みもコンセプト計画も、まったく同じような文言が並んでしまっているようにも思えます。
相変わらぬ「ハード」優先。ハードをつくればテナントはどこからか沸いてくる、という旧時代の発想で開発を続ける限りにおいては、大規模ビルが大型ビルのテナントを奪い、大型ビルは中小ビルのテナントを襲い、食えなくなった中小ビルがスラム化するという「温かみも温もりもない」街づくりが繰り返されていくだけです。
多様な人材を集める、外国人にも不便なく働き、生活してもらう、多様なベンチャー企業が集い、発展する街を作りたいのであれば、ハードばかりではなく、彼らを呼び込むことができるソフトウェア、コンテンツといった企画立案能力が今後は問われてくるのです。
そろそろ競争のルールが変わろうとしています。20年東京五輪は私たちにいろいろな示唆を与えてくれるイベントになることでしょう。東京が、日本が大きく「変革」するときがもうすぐそこに迫っているのです。
牧野 知弘(まきの ともひろ オラガ総研株式会社 代表取締役)
東京大学経済学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。「日本橋コレド」「虎の門琴平タワー」など数多くの開発を手がけた後、三井不動産ホテルマネジメントに出向しリノベーション、経営企画、コスト削減、新規開発業務に従事。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し東京証券取引所REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野およびオラガHSC設立。2015年オラガ総研設立。テレビ、ラジオでの穏やかな語り口に定評がある。