- 鈴木 克彦
- 株式会社マクス 代表取締役
- 建築家
対象:新築工事・施工
現在外壁に使っている漆喰は、オーストリアの伝統あるメーカー「デュリンガー社」の漆喰です。
写真は、実際にオーストリアで撮影した物で、白と黄色の物は、漆喰の外壁です。
25年間ノーメンテナンスの南側の壁面だそうです。
新建材で25年間ノーメンテ…あり得ないです。
もう一枚の写真は、新しいパン屋さん。
漆喰ではない新建材の左官仕上げの建物ですが、ずいぶんと汚れています。
これには、ちゃんと理屈があります。
私が使っているデュリンガー社の漆喰は、100%の漆喰。
そう、前回のコラムで言えば、100%水酸化カルシウムです。
(表情を出すために、細かい砂は入っていますが、これはあくまでも素材感を出すためのツブツブで、藁を入れるのと同じです)
つまり、完全に無機質です。
通常の新建材の左官材には、合成樹脂などの有機物が含まれますが、これはいわばビニールなので、静電気を帯びます。
↓
そうすると、埃などの汚れを自分で吸い付けます。
↓
くっついた有機分を元に、苔が生えます。
↓
苔を食べる小さな虫が来ます。
↓
それを食べる蜘蛛が巣を張ります。
だから、100%の漆喰の方は、汚れていなかったんですね。
ヨーロッパで漆喰と言えば有名なのが、フレスコ画。
フレスコ画とは、Wikipediaによると、
『フレスコは、まず壁に漆喰を塗り、その漆喰がまだ「フレスコ(新鮮)」である状態で、つまり生乾きの間に水または石灰水で溶いた顔料で描く。やり直しが効かないため、高度な計画と技術力を必要とする。』
とあります。
フレスコ画も漆喰の100%無機の石灰と顔料を使用します。
つまり、フレスコ画などの美術品は「簡単に補修できない・しない」ということです。
色はもちろん薄くなっていますが、この状態が残せるということが本物の良さなのです。
だから私は、100%にこだわって、漆喰を選んでいます。
要は長持ちするから。
ただ単に、偏狭的に自然素材信者、と言うわけではないのです。
これらを踏まえた上で、やっぱりビニールクロスが良い、と言う方に、そんなの偽物だ!何て言うのは横暴以外の何ものでもありません。
ついでですが、漆喰にしても、珪藻土にしても、なぜみんな合成樹脂が入っているのか…?
答えは「ヘアークラック」です。
「クレームだぁ!ただでやり直せぇ!」
って言われたら、誰だって嫌です。
このヘアークラックの防ぎにくさは、100%の漆喰の弱点とも言えます。
だから、合成樹脂入りの、ひび割れしない物が多いわけです。
安いし。
ですが、施工中は換気しないと臭いし、施工後も、ライターであぶるとゴムの焼ける刺激臭がします。
もはや自然素材とは言えないと思います。
この事実を説明した上で、
「どっちが良いですか?」
と選んでもらうのがプロの仕事では? と思います。
(続く)
施工:株式会社マクス 代表取締役 鈴木克彦ブログ: 【頑張れ四代目日記】
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