『情報共有』は共通認識から - コラム - 専門家プロファイル

福岡 浩
有限会社業務改善創研 代表取締役 業務改善コンサルタント
神奈川県
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月26日更新

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『情報共有』は共通認識から

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 数多くの介護事業所や介護施設に伺う機会があり、訪れた先の組織としての「情報共有」がどの程度進んでいるか、少なからず感じ取れるようになりました。

 例えば、ある事業所で宅配便に「佐川急便」を利用しているとしましょう。事業所職員同士で、「誰か佐川さんに集荷の連絡をしましたか?」、「先ほど連絡して、お昼前には佐川さんが来られるそうです」と言うような会話を耳にしました。「佐川さん」と聞いても部外者の私は一瞬分かりませんでしたが、「集荷」という言葉でおおよその見当がつきました。

 ここで大事だと思ったことは、情報を正しく共有するには共通認識が必要であり、その一つが、「共通言語」だと痛感しました。彼らは「佐川さん」という言葉を使うことによって、それが宅配便業者だとすぐにわかります。しかも固有名詞で統一されると、間違いなく大和でもなければ、日通でもない、福山でもないわけです。

 また、「さん」付けで言っているので、部外者の私は好感がもてました。この事業所では呼び方までも共通に認識されているのでしょう。出入りの業者を呼び捨てにする会社もありますが、サービス業としてはあまり好ましくないと思います。

 「共通認識」を支えているのは、「共通言語」であり、もう一つは標準化された個々の作業です。例えば、電話の応対などは、それが明確にわかります。ある事業所では、誰が電話をとっても同じ応対が出来ています。「お電話、ありがとうございます。〇△◇介護サービス、山田が承ります。」と、言って電話を取り、事務所にいる誰もが同じように電話を取ります。話す速さ、抑揚などが自然に統一された印象を受けました。

 一口に「情報の共有化」と言ってみても、言葉だけが先行してしまい、思うように共有れない情報があります。そのもっとも初歩的な問題点は、「共通言語」がないのにもかかわらず、口頭で情報を共有しようとしている場合です。電話応対すら俗人的な方法で各自が対応している限り、情報の共有は難しいと言わざるを得ません。

 では、口頭で行う「情報共有」が難しいなら文書にしたらどうかといって、連絡ノートに必要な情報を書き止めておき、関係者がそれを読んだらサインすることにしましたが、それでも十分に共有できない、なぜでしょうか。それは、やはり「共通言語」が整っていない上に、伝えるべき内容が文書に書けないという大きな問題があります。個々に自分自身の使い慣れた言葉で連絡事項を書いていれば、伝わり難い個所が続出します。少なくとも、よく言われる「5W1H」で書かれていることが最低条件ですが、それすらも徹底されていないことがよくあります。その結果、ある人にはわかるが、別の人にはよくわからないという状態になります。これでは、一部の人々だけが情報を共有しているに過ぎません。

 では、「共通認識」を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。これは、難しいようで意外に簡単かも知れません。業務に必要な用語を極力職場内で共通化し、口頭での「情報伝達」には必ず先ほどの「5W1H」または、「5W2H」で行うこと、次に伝えようとする内容を相手が理解したかどうかを必ず確認すること、そして、できる限りその内容を記録することです。

 ただし、これらがすべて上手にできるようになったとしても、組織内の構成員間に「情報共有」に必要な知識や経験の差が生じていると、形式化した「情報共有」となります。経験の差、知識の差は、それを埋めるための組織力が必要です。それには経験の浅い人や知識が不足している人に対する情報の伝え方を工夫したり、理解力を高める訓練が必要になります。

 IT機器が普及する以前の終身雇用や年功序列が当たり前だった時代の企業組織では、情報は上から下へしか流れていませんでしたので、情報を共有するという言葉もなかったかもしれません。しかし、今では情報は下からも上からも左右、前後からも流れてきます。そうなれば、正しい情報をいかに早く組織内で共有し、事業運営に活用していくかが重要になります。

 残念ながら、介護業界では「情報共有」が遅れているという事実を否定できません。一事業所、一施設で共有できない情報を、他事業所と「情報共有」しようとするのは、甚だリスクがある話ではないかと気がかりです。

  「情報共有」が十分に機能していなければ、業務の改善も進みません。顧客サービスである介護サービスの質も高められないことになります。共通言語を浸透させて、共通認識が進むと「情報共有」も見えてくるでしょう。

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