高気密・高断熱を考える(前編) - エコ・省エネ住宅 - 専門家プロファイル

斉藤 昭彦
斉藤昭彦建築設計事務所 
京都府
建築家

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閲覧数順 2016年12月07日更新

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高気密・高断熱を考える(前編)

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高気密・高断熱という言葉は、今ではあたりまえのように使われています。しかし言葉だけが一人歩きしているような気がしないでもありません。

高気密・高断熱は、住宅などの建築物の環境性能に関係する言葉です。環境性能の内容はふたつあります。ひとつは温熱環境に関わるもので、快適さを実現するための性能です。各部屋の温度差をなくし、ヒートショックを防止することは、高齢者のいる家庭では特に重要です。もうひとつの性能は、省エネルギー性能です。冷暖房にどのエネルギー源を使うにせよ、資源には限りがあるわけですから、エネルギー消費の少ない建物にしていくことは当然必要なことです。

快適であり、同時に省エネルギーでもあるような建物であれば理想的ですが、現実にはそう簡単にはいきません。ふたつの性能は多くの場合相克します。たとえば、断熱性が低いままで全室冷暖房を行っていた建物を高気密・高断熱化すれば、より快適になり、同時に省エネルギーにもなります。しかし現実に存在する断熱性の低い建物は、ほとんどが一部の部屋のみの冷暖房です。ですから高気密・高断熱化(当然全室冷暖房になります)は、快適さを増すことになっても、建物全体で消費するエネルギーを減らすとは限らないのです。建て替えや断熱改修によって、快適さと省エネルギーの両方を手に入れたという個別事例はもちろんあります。しかし統計的に見ると、次世代省エネルギー基準によって高気密・高断熱住宅が建てられるようになってからの約10年で、住宅でのエネルギー消費は、減るのではなく増えているのです。それは、高気密・高断熱自体に罪があるのではなく、全室暖房という概念がなかったところに高気密・高断熱を持ち込んだからなのですが、結果だけを見るならば、高気密・高断熱化は省エネルギー面での成果を上げていないと言えるわけです。

もちろん得られた快適さが何物にも代え難いのであれば、それは省エネルギーに逆行してでも進める価値があります。問題は、その見極めをすることです。必ずしもすべての建物で、高気密・高断熱化が必要というわけではないでしょう。これまでの暖房方式で不満がなければ、そのままでも構わないと思います。

快適で省エネルギーな建物を実現するには、必ずしも高気密・高断熱にしなければならないというものではありません。夏ならば、風通しをよくするだけで、快適さは大きく改善されます。冬には日射を取り入れ、その熱を床などに蓄えること(蓄熱)で、暖房費を減らすことが可能です。もちろん蓄えた熱を夜間まで有効に使おうとすれば、熱が逃げないように高気密・高断熱化が必要になります。地域の気候や生活パターン、トータルでの消費エネルギーを考慮して決めていく必要があります。

住宅メーカーも工務店も、最近は高気密・高断熱を謳い文句にしています。しかし高気密・高断熱化が進んでいるにも関わらず、それが省エネルギーに結び付いていないのは、従来通りのプラン(いわゆる間取り)のままで高気密・高断熱化が行われたからです。高気密・高断熱化すれば、廊下や便所、物置など、これまで冷暖房が行われてこなかった部屋にも冷暖房が行き渡ります。いくら断熱性があがっても、冷暖房する空気の量が増えれば、省エネルギーの効果を打ち消すことになります。しかし各部屋の間での温度差がなくなることは、身体的な負担を減らすという面では望ましいわけです。ですから高気密・高断熱のメリットを生かすには、建物のプランから考える必要が出てくるのです。

高気密・高断熱にするならば、廊下をなくし、収納も少なくしたコンパクトなプランが望ましいと言えます。敷地内に夏用の棟と冬用の棟の2棟を建て、季節に応じて使い分けるという考え方もあり得るでしょう。高気密・高断熱の特性を踏まえた上で、快適性と省エネルギーを両立させるような建物のあり方を考えていかなければならないと思います。

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