KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(7)第4回 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(7)第4回

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   米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(7)
      〜常識と長期間未解決であった必要性〜(第4回) 
   河野特許事務所 2010年3月1日 執筆者:弁理士  河野 英仁

                Perfect Web Inc.,
              Plaintiffs- Appellant,
                 v.
               InfoUSA Inc.,
               Defendant- Appellee.

4.CAFCの判断
争点1:公知の処理の繰り返しは常識に過ぎない
 CAFCは、先行技術に開示されたステップA〜Cを繰り返して、クレーム1を完成させることは常識に過ぎず、自明であると判断した。

 以下に自明性の判断手法について概説する。自明性は米国特許法第103条*5に規定されている。

米国特許法第103条
「発明が第102条に規定された如く全く同一のものとして開示又は記載されていない場合であっても,特許を得ようとする発明の主題が全体としてそれに関する技術分野において通常の技術を有する者にその発明のなされた時点において自明であったであろう場合は特許を受けることができない。」

 自明か否かの判断においては、Graham最高裁判決*6において判示された下記事項を検討する。
(i)「先行技術の範囲及び内容を決定する」
(ii)「先行技術とクレーム発明との相違点を確定する」
(iii)「当業者レベルを決定する」
(iv)「2次的考察を評価する(商業的成功、長期間未解決であった必要性、他人の失敗、模倣等)」
 これらを総合的に考慮して当業者にとって自明か否かを判断する。

 KSR最高裁判決以前は、厳格なTSMテストが採用されており、自明と判断するためには、先行技術中にクレームに想到するための具体的な教示・示唆・動機付けが必要とされていた。

 KSR事件において最高裁は、先行技術中の記載に拘泥する厳格なTSMテストを廃し、非自明判断の要素として「常識common sense」をも適用可能なフレキシブルアプローチへと大きく方向転換した。

最高裁が例示した非自明判断の要素は以下のとおりである。
市場要求(market forces)、
設計上の動機(design incentive)、
複数特許の相互に関係する教示、
発明時において傾注分野において知られているいかなる必要性または問題、特許により言及されている必要性または問題、及び
当業者の背景知識、創造性、常識

 CAFCは「後知恵によるこじつけ、及び、事後的理由付け」には注意する必要があるものの、「常識」は先行技術を組み合わせ、または、改変して特許発明に想到するための要素となると判示した上で、以下のとおり判断した。

 クレーム1においてステップA〜Cは受信者のグループを目標とすること、電子メールをこれら受信者へ送信すること、及び、成功裏に配達された電子メール数を計数することを含む。原告は先行技術がこれら3つのステップを開示していることを認めている。残りのステップDは、
「(D)前記計算された数が、前記計算された数が前記所定最小数を超えるまで、前記(A)〜(C)のステップを繰り返す。」にすぎない。

 この最後のステップは、単に成功となるまで、公知の処理の繰り返しを記述しているに過ぎない。例えば、100通の電子メールの配信が命じられた場合、第1回送信時は95通だけ配信できたとする。「常識」からすれば、マーケティング担当者はもう一度トライするであろう。なお、原告及び被告は、本事件における当業者は「高校教育を受けた者、マーケティング担当者またはコンピュータ経験者」程度という点に同意している。被告はさらに鑑定人による主張を成したが、CAFCは鑑定人の意見に依らずとも常識であると結論づけた。

                                   (第5回へ続く)

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