中国特許紹介:スクリーン装置実用新型特許権侵害事件7 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許紹介:スクリーン装置実用新型特許権侵害事件7

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   中国特許判例紹介:スクリーン装置実用新型特許権侵害事件
      〜実用新型特許権の有効活用〜(第7回) 
   河野特許事務所 2009年2月15日 執筆者:弁理士  河野 英仁

             泉株式会社(日本)
               原告-被上訴人
                v.
          広州美視有限公司等
               被告-上訴人



争点3:請求項数にかかわらず損害賠償額が決定される。
 高級人民法院は、一部の請求項が無効になろうとも、侵害に係る請求項数と損害賠償額とが一致している必要はないと判示し、第1審と同額の損害賠償金の支払いを命じた。

 損害賠償額の具体的算出手法は専利法第65条に規定されている。
専利法第65条
 特許権侵害の賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損失に基づいて算定する。実際の損失の算定が困難な場合には、侵害者が侵害により得た利益に基づいて算定することができる。特許権者の損失又は侵害者の得た利益の算定が困難な場合には、当該特許の実施許諾料の倍数を参酌して合理的に算定する。特許権侵害の賠償額は、特許権者が侵害行為を差し止めるために支払った合理的な支出を含むべきである。
特許権者の損失、侵害者の得た利益及び特許の実施許諾料の算定がともに困難な場合には、裁判所は特許権の種類、侵害行為の性質や情状などの要素に基づいて、1万元以上100万元以下の賠償額を決定することができる。

 簡単に言えば、第1に原告の損害額、第2に被告の利益額、第3にライセンス費の1〜3倍の額、第4に人民法院が裁量で100万元以下の額を決定する。中国各地で発生する模造品事件についていえば、一般に原告の損害、被告の利益を立証することは困難なことが多い。また、中国現地で実施許諾を行っていないことも多く、ライセンス費に基づく損害額の立証も困難であり、結局は第4の人民法院の裁量により損害賠償額が決定されることが実務上多い。

 本事件においても、原告は自身の損害額はおろか両被告の利益、ライセンス費をも立証することはできなかった。結局、人民法院は特許の類別、両被告の侵害の性質及び情状等の要素を考慮して損害賠償額12万元を確定した。この中には、原告が調査、侵害行為の制止のために支払った合理的支出(イ号製品購入費用は2500元、公証費は1800元)が含まれている。なお原告は合理的支出として弁護士費用12万元をも主張したが、ほとんど認められなかったようである。

 また、高級人民法院は、無効宣告により請求項5は無効となったが、両被告のイ号製品は依然として請求項12に係る特許権を侵害していることから、損害額は必ずしも侵害に係る請求項数と一致している必要がないと判示した。以上の理由により、第1審と同じく12万元の損害賠償金の支払いを命じた。

                                   (第8回へ続く)

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