- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
高気密高断熱工法は純粋に外壁や屋根の気密性・断熱性を確保するための工法から、それを如何に合理化しながら性能を確保するか、という意味でのパネル化への流れがあり、そこに暖房や換気のシステムを組み込んでゆくことになりますが、高気密高断熱の外張り工法をベースに壁体内空洞を空調空間として利用しようという、いわゆる高気密・高断熱とエアサイクルの利点を活かして空調・換気も含めたトータルな意味での高気密高断熱住宅システムを販売するもうひとつの流れがあります。
その代表的なものはO2-21(アイジーダイヤシステム)とFAS(福地建装)で、O2-21ハウスは外断熱工法にエアフレッシュシステム-21という空調・換気システムを採用したものです。
断熱仕様はプラスチック系断熱材を外張りした上に、フェノールと硬質発泡ウレタンを合成して難燃性を持たせたダンフロンという断熱材を室内側から現場発泡するものです。
暖房と換気の方法は、床下に温水パイプが敷かれ、小屋裏から熱交換換気装置を通して取り入れられた新鮮空気を床下まで導入し、床下で暖められた空気は壁体内を上昇すると共に、窓廻りに設けられたスリットからコールドドラフトを抑えながら室内に送られます。
排気は各部屋から再び熱交換換気装置を通って屋外に排出されます。換気と暖房を併用しながら家全体を暖気で包み込み、輻射熱による快適な暖房空間を目指したシステムと言えるでしょう。
FAS(ファースの家)の基本的な考え方はO2-21と同じですが、暖房には深夜電力を利用する蓄熱暖房機を用いて床下に敷いた砕石に蓄熱する方法を取っています。
夏は小屋裏に設置したエアコンで冷気を循環させ、冷暖房の「オール電化」を売りにしています。付加価値としては、北側の冷気を地中を通して床下に導入し、壁体内を上昇して小屋裏から排出するという、中間期における自然冷房が考慮されていることです。
また、床下には散布した調湿材と温度センサーによって稼働する調湿装置が備えられ、湿度に対する快適さにも配慮しています。
この他、エアサイクル研究所では小屋裏と床下にそれぞれエアコンを設置して冷暖房を行うエアロックシステムや、さらにそれを進化させて各室に給気口を設けたニューアトロシステムがあります。
このように木造在来軸組工法による住宅は、外断熱工法によって生まれる壁体内空洞を、エアサイクル的利用から最も理想的な空調方式と言える輻射冷暖房を可能にする空間として捉え直され、空調と換気をトータルにデザインする様々な方法が試みられています。