平成22年度廃棄物処理法改正の可能性(第2回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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平成22年度廃棄物処理法改正の可能性(第2回)

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正
 「平成22年度廃棄物処理法改正の可能性」の続きになります。


 廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)もご覧ください。

 
 前回のコラムでは、このたびの廃棄物処理法改正の主眼は、「排出事業者責任の強化・徹底」にあると書きました。

 今回は、「排出事業者責任の強化・徹底」についてさらに詳しく解説したいと思います。

 上述した、「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」から該当する部分を抜粋・要約します。
 
1.排出事業者責任の強化・徹底
・小規模施設(=設置許可不要)で自社処理をしている排出事業者にも、帳簿の作成と保存を義務付けるべき
・排出事業者の産業廃棄物保管行為を行政が把握できるようにするべき
・委託先の処理業者のところを定期的に訪問し、委託契約どおりに処理されているかどうかを、排出事業者に確認させるべき
・建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき


 排出事業者に対しては、これだけの規制が追加される可能性があります。

 専門委員会で特に議論が紛糾した個所としては、「委託先処理業者に対する実地確認」を義務化するかどうかについてでした。

 結論としては、実地確認が罰則付きの義務とされることはなさそうですが、契約締結時の努力義務化される可能性は高そうです。

 専門委員会では、実地確認の義務化をした場合の影響について、建設業界を代表する委員がこのように発言していました。

 第10回専門委員会 塚田委員(日本建設業団体連合会環境委員会地球環境部会長)の意見
 実際問題としましては、例えば私日建連の企業などは、これは自主的に実地確認はやっております。
 やっているんですが、自分が出した廃棄物のトレーサビリティーを全部して、それを確認しなさいというのは、前から申し上げているように、これは無理だと思います。
 それで、こういう実地確認ということと、それから私この文言に資料3の2ページで出させていただきましたように、実は適正なサービスを委託しているという委託側、つまり中間処理業者とか処分業者の情報の公開とかその辺を義務づけて、それから、後ほど出てくる優良業者とは何かという定義の中で、遵法性、情報公開、環境保全云々とあるわけで、この辺のところがきちんと情報公開されれば、つまり、優良な業者とは何かということになれば、入ってくるほうと特に出のほうの収支がはっきりしている会社というのが優良な業者ということになりますので、優良な処理業者の情報とこの辺をセットにして、私がここに書きましたように、その辺の情報提供あるいは公開を義務づけて、むしろ排出事業者がその辺の開示情報に基づいて処理の確認ができる。
 これをセットでやってもらわないと、これは恐らく無理だと思いますので、ぜひその話は、優良業者とは何かということともつながってくる話だというふうに思っております。


 私個人としても、塚田委員の主張が正しいと考えます。

 排出事業者による実地確認は、排出事業者自身の法的リスク(委託先が適切な処理業者かどうか)に対処するために行うものであり、廃棄物の日々の流れをトレースするために行うものではないからです。

 現実的な問題として、廃棄物の流れを、リアルタイムでトレースするのは、ICタグなどを用いないかぎり不可能です。
 また、ICタグをすべての廃棄物にくっつけるのは、資源と労力の無駄遣いです。

 
 環境省としても、「排出事業者は、日々の廃棄物の動きをトレースせよ」と言っているわけではないため、そんな思惑はないものと考えられますが、排出事業者責任が年々強化される様子を見て、産業界を中心に、実地確認を受けれいれる側の処理業界も、実地確認の義務化には強い拒絶姿勢を示しています。

 しかしながら、企業の法的リスクに対処するためには、担当者自身が現場を訪れ、実際に廃棄物が処理される様子を見学することが絶対に必要です。

 実地確認を義務化するか、しないか
 実地確認をするか、しないか
 という二者択一ではなく、冷静に法的リスクを把握し、それに対処するためにはどういう行動が必要なのかを、もっと冷静に議論されても良かっただろうと思います。


 その他の排出事業者責任の強化・徹底についても解説しておきます。


小規模施設(=設置許可不要)で自社処理をしている排出事業者にも、帳簿の作成と保存を義務付けるべき


 現行制度では帳簿の整備が求められていない排出事業者であっても、自社で中間処理や最終処分を行っている場合は、廃棄物の処理に関する帳簿を作成する義務が追加されそうです。
 排出事業者の規模や、帳簿の記載項目などの詳細は、これから検討されるようです。


排出事業者の産業廃棄物保管行為を行政が把握できるようにするべき


 建設系廃棄物の場合、誰が排出事業者なのかわかりにくいことがよくあるため、保管の段階から、行政にその事実を届出させるようになるかもしれません。
 これも、保管面積や届出内容の詳細などは未定です。


建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき


 上記の内容とも重なる項目ですが、元請会社と下請会社が混在するような場合、廃棄物の排出事業者は元請会社に統一してはどうかという提言がされています。



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