- 阿妻 靖史
- パーソナルコーチ
対象:コーチング
フォーカシングという、心のセルフケアに向いた方法があります。フォーカシングというのは、気持ちを体の感覚として感じるワークです。フォーカシングによって乱れた感情を落ち着かせ、あるいは、ある感情の下にある別の感情に気づいたり、長いこと抑え込んでいた気持ちを発見したりと、心のケアとしてとても役立ちます。
と言っても、それほど特殊な技法ではありません。私たちは、楽しいときに胸が躍るような感じとか、いいたいことが言えないときに喉が締め付けられるような感じとか、そんな風にして、自分の感情を体の感覚として感じることになれています。フォーカシングは、その感覚を利用して自分の感情の整理を進めていく方法です。
ちなみに体の感覚に意識を向ける(フォーカスする)からフォーカシングといいます。
まず、落ち着いた姿勢で椅子に座り、ゆっくりと呼吸をしてリラックスします。横になってこのワークをやると、途中で寝てしまうかもしれないので、座って行うことをお勧めします。既に何か感情が湧いてきているとき(たとえば、直前に腹立たしいことがあった、など)は、迷わずその感情に意識を向けていきます。体のどこで一番強く感じるかを、探っていきます。
特に感情が湧いてきているわけではない場合は、
「私と一番話したがっているのは、どこかな?」
「喉かな?」「胸かな?」「胃かな?」「下腹かな?」
と、訊いていきます。ネガティブな感情の場合はほとんどこの4カ所に出ます。
そして、体の感覚(フェルトセンスといいます)の場所がはっきりしてきたら、その場所に意識を向けていきます。手を当ててみるのも良い方法です。
しばらく体の感覚と寄り添ったあと、挨拶します。
「こんにちは。」「私は、あなたがここにいることを知っていますよ。」
そして、どんな感じかを言葉で表現してみます。たとえば、胸のあたりがざわざわする感じ。
実際に声に出して言ってみて、違和感のない「そうそう!」という感じがしたらOKです。
さらに、その感覚に名前をつけてみます。
「未来不安くん」
そうそう。未来に対してなんだか漠然とした不安があって、胸がざわざわするんだ。だから、「未来不安くん」という名前がぴったりな感じ!
その感覚に、こう尋ねます。
「あなたはどうして、私の中にいてくれているの?」
ネガティブな感情も、必ず意味があってそこに存在しています。
答えは、必ずしも言葉で返ってくるとは限りません。テレパシーのようなものや、映像で返ってくることもあります。多くの場合、「あなたを守るため」のような答えが返ってきます。まだその気持ちがそこにいることに意味があると思うなら「ありがとう。これからもよろしくね。」と伝えておしまいにします。
もうその気持ちとはお別れしてもいいな、と思うなら「今までありがとう。これからは、あなたがいなくても大丈夫。さようなら。」そう伝えておしまいにします。
ここまで本格的にやらなくても、体の感覚に意識を向けつづけるだけで、感情の解放が進んでいくことがあります。それだけでも、大きな意味があります。瞑想として行ってもいいです。そして、感情は幾重にも折り重なっています。もしもフォーカシングをしていて、初めに出てきた感情が別の感情に変化したとすると、一段階感情の解放が進んだということになります。
こうやって感情の整理をつけることのできるフォーカシング。
ぜひ、とり組んでみてください。
参考文献としては、アン・ワイザー・コーネル 「やさしいフォーカシング」 コスモス・ライブラリー
が分かりやすくてお勧めです。
私の使っているセラピーの手法も参考になると思います。