- 堀江 健一
- カウンセリングルーム エンパシィ 代表責任者
- 東京都
- 恋愛恐怖症・心の問題カウンセラー
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愛着関係に影響を与える幼少時の出来事や環境
前回まで、人に恋愛感情や愛着感情を抱いた時に、愛着に問題がある人がどのようなパターンの愛着スタイルを持つのか紹介してみました。
今回は、愛着障害の基となる、幼少時の生活環境のいくつかの例をご紹介してみます。
これは私のカウンセリングの経験を通して、実際にある例をもとに紹介するものです。
特に、まさかこんな事が後々の自分の人間関係、恋愛にまで影響を及ぼすとは!と言う例をご紹介してみたいと思います。
順番に見て行きましょう。
●歳の離れていない妹や弟がいる
自分が、両親の愛情を一身に受けている真っ最中に弟や妹が出来てしまい、お母さんの面倒見る手がそちらにかかるようになると、急に愛情が奪われてしまったように感じるものです。
こうした感情は、一般的にも広く知られているものかと思います。
が、あまり恋愛することに強く影響を及ぼす要因とは理解されていないものかと思われます。
やきもちなんて生易しい心情では済まなく、それは生存に関わる大問題となります。
物心付いてからであれば、小さい下の赤ちゃんを、自分が面倒見てあげたい、可愛いと思えたりするかも知れませんが、自分自身がまだ幼児ですから、親の愛情を奪われたくない本能的欲求の方が強く感じてしまっても無理はありません。
特に下の子が同性であれば、余計にライバル心の様なものが強化されてしまわれると思われます。
その様な経験が、成長してからの性格に影響を及ぼし、
愛着を感じる対象からの愛情を失う事に、過剰に不安を覚えてしまったり、
相手の愛情の度合いに敏感になり、顔色や態度をとても気にしてしまう傾向が高まるようです。
また、男性の場合は「お兄ちゃんだから」と親からも優先されような場合が多い事もありますが、
女性の場合には「お姉ちゃんなんだから、我慢しなさい」と我慢させられ、我慢するのが当たり前のような習慣が付いてしまうことが多いようです。
自分の欲求や気持ちは、抑えてしまったり、出さないようにする癖がついてしまい、自分本位に振舞うことにさえ、罪悪感を感じるようになってしまいます。
自分の欲求を感じ、それを素直に人に表現する事を「我儘」と思って、人に甘える事を禁止してしまっている人がとても多いように感じます。
人によっては、もっともっと我儘になって良いのです。
基本的にはこのように、養育者からの愛情を受けて、安心して満足して過ごせる状況では無くなってしまう環境が、愛着障害のベースを作り出してしまう事になります。
●家族の中に病人がいた
家族はその病人の世話が大変で、子供である自分にまで手が回りません。
病人が最優先されるので、自分のことは犠牲にして、家族からもないがしろに扱われてしまうのが日常的となってしまいます。
家族に甘えたくても、家族にも甘えさせてあげる余裕はありません。
また、周囲の人たちも、我慢している子供を「仕方ないねぇ」「でも偉いねぇ」と我慢している事を褒めたたえることでしょう。とても本当は我慢ばっかりしていたくない!とは言いだせない空気が出来てしまいます。
寂しさや不満、病人を妬んでしまうことへの罪悪感など、複雑な葛藤を抱き、自分の欲求を抑圧してしまう傾向が強くなりがちとなります。
●親が共稼ぎ
両親ともに常に急がしそうだったら、なにか甘えたり、駄々をこねる事を極度に遠慮してしまう心情になります。
忙しいく余裕が無い親なら、話を着て聞いて欲しくて甘えても、返って不機嫌に怒られてしまうかもしれません。
自分は親にとって大切な存在であると思えなくなってしまっても不思議ではありません。
そして「もっと親に甘えたかった」と言う寂しい気持ちと
「甘えさせてもらえなかった」と言う怒りの気持ちが両方あっても不思議ではありません。
しかし大人になればなるほど、「親は精一杯私を育ててくれたのだ」と理屈で考えて納得しようとします。
感謝する気持ちも高まるのですが、「甘えさせてもらえなかった」と言う怒りの気持ちはむしろドンドン抑圧されていってしまいます。
そうした怒りが、潜在意識となって、思いもよらぬところで表に出てしまう事があります。
意識の表層では親にも世の中にも別に不満は感じていないのですが、心の底で怒りを抱えているのですから、問題が起きても無理はありません。
人間関係や恋愛関係に悩む人は、そうした背景も踏まえて問題を考えて行く必要があると言えるでしょう。
●親が自宅で自営業をしている
上の例と重なる部分もありますが、それ以上に商店街でお店などしている場合、状況がまた少し違ってくるようです。
勤め人であれば、親が会社などに行くわけですから、出勤している間は子供の目の前に親はいないことになります。
しかし、家で自営で商売などしていると、いつも目の前に親がいるのに、親は忙しくて構ってもらえない状況となります。
目の前に親がいるのに愛情を注いでもらえない状況を、子供には「親も仕事があるのだから仕方が無い」と理解する事は難しいでしょう。
目の前にごちそうがあるのに食べられない欲求不満ような、構ってもらいたいのにそうしてもらえないと言う不満が高まるようです。
また商店街での商売などでしたら、周りの商店の人たちや、お客さんなど顔なじみが増えることになります。
様々な人たちから面倒を見てもらえ、色々な人達から愛情を受ける事もあると言うメリットはあるようです。
ですが大きくなって、思春期を迎え、自我の芽生えや自立するための準備段階になったときに、自分の周りの人たちのほとんどが自分を知っている人たちだったら、それは「いつも誰かに監視されているような気持ち」になってしまいます。
地方などの村のような狭い人間関係しかない地域でも同様なことが起こります。
近所の住人がみんな顔見知りだったりすると「いつも人の顔を気にして、やりたいことが出来ず、良い子でいなければならない」状況が生まれてしまうのです。
その様な時期に少し反抗的になれて、ヤンキーのように振る舞えれば、本人にとっては自然で幸せかも知れません。
●親の愛情が過剰
無力な子供に対しては適度な世話が必要ですが、そのバランスが極端に過剰であったり、不足していても、問題が生じる可能性があります。
初めての育児ですと、親も育児経験がありませんから、適度な愛情の示し方がわからなくても仕方ないものでしょう。
ちょっとした事で心配になり、オロオロしてしまうこともあるでしょう。
しかし、それが過度になり、育児ノイローゼのように、いつも「自分の育て方が悪かったのではないだろうか?」「自分の対処の仕方が悪かったのではないか?」と自分を責めてしまったり不安が強くなってしまうと、子供に過剰に干渉してしまう事になりがちです。
親子間には独特のテレパシーのようなイメージの心の交流があるようです。
共感能力の高い母親は、子供が泣いている時に、なぜ泣いているのか的確に理解出来たりするものです。
「あぁお腹がすいたのね」
「抱っこして欲しいのね」
「おむつが濡れちゃったのね」
などなど。
逆に子供もお母さんの心情が、なんとなく漠然と伝わり、心の交流があります。
簡単に言ってしまうと、お母さんの不安が強いと、子供にもそれが伝わり、漠然と子供も不安を強く感じて自分も不安になってしまう事があるようです。もちろん赤ちゃんがそんな事を意識出来るわけではありませんが。
おっぱいを欲しいからと言って、安心して泣いて要求出来る様な単純な状況ではなくなってしまいます。
あまりに養育者が心配性だったり、自責の念が強かったりすると、安心して素直に甘えられなくなってしまうのです。
誰か育児のベテランさんに頼ってみるとか、ママさんの育児勉強会などに参加する事で、お母さん自身の不安感を軽減しておく必要があると思われます。
また、こう書くと、それを読んだ身に覚えのあるお母さんが、「やっぱり私が悪いんだ」と思ってしまう可能性がありますが、それではやはり自分を責めてしまいすぎる事になります。そのような自己否定的な感覚が強い方は、育児に限らず、生活全般に生き辛いを抱えている事が多いので、何らかの形で解消しておくに越した事は無いでしょう。
またこうした育児経験を経ることで、兄弟がいる場合、兄弟間の育て方に差が生まれる事も良く聞く話です。
単純に多くの場合、親も育児未経験な為に長男長女は神経質に育てられる傾向が強くなりがちです。
●甘やかし過ぎてはいけないと思いすぎて、過度に厳しく躾してしまったり
●人から愛される子になって欲しくて、過剰に愛される子であることを強制してしまったり
●そのためちょっとした事にも過干渉にしてしまったり
しかし2人目以降の子供になると、程ほどの良いバランスがわかってくるので、良い意味で神経が行き届かなくなり、育て方がおおらかになったりします。
下の子の方が、緩くてのんびり育てられることになります。
その事が後々「弟は許されたことが、自分は厳しく禁止されていた」
「自分は嫌なことを強制されたのに、妹は自由で許されていた」
「不公平じゃないか!」「理不尽じゃないか!」「自分だけが不幸だ」「今、自分が生き辛いのは親や弟のせいだ!」
と、成長してからも恨みつらみの念が溜まって、
「自分だけが誰にも甘えられないし、誰からも愛されない」
と言う様な無意識的な信念が強くなって、怒りを抱えてしまう事さえあるようです。
こうした事は家族間に対する怒りの感情以外の、恋愛対象の様な愛着対象に対しても、無意識的にイメージが重なり
恋人や夫婦、職場の上司などに対しても
「自分をなんでもっと受け入れてくれないのだ!」「ありのままの自分を愛してくれないのよ!」
と言う様な子供の時から抱いていた”理不尽さに対する怒り”を、過剰に感じてしまうような事が起こります。
つまり傷付きやすい性格になってしまうこととなります。
●親の共感能力が低い
また、上に親子間の独特の心の交流と書きましたが、その心の交流に関して鈍いお母さんもいるのも事実の様です。
簡単に言うと、子供が泣いていても、なんで泣いているのかわからないような、子供のして欲しい事に対して鈍くてわかってあげられない親です。
これは一つの共感能力とも言うべき能力だと思いますので、それが鋭い人もいれば、鈍い人もいるのも仕方ないかとは思います。
しかし日常的に子供が泣いていても、どうしてあげれば良いかわからないからほって置くようでは、ネグレスト(育児放棄)になってしまうような深刻な問題にもなります。
泣いて何かを要求しても、要求した事は満たされないと言う事を覚えてしまう事になります。
お母さんから愛情を受けると言う概念が持てなくなってしまうことになります。
極端な場合、おっぱいが欲しくて泣いているのに、自分(お母さん)を困らせるために泣いている嫌がらせの様に感じてしまっては、お母さんもイライラして怒りを感じて折檻してしまいかねません。
エスカレートすれば虐待になってしまいます。
そのような傾向があるお母さんは、やはり育児に関しての場面だけでなく、基本的に人の気持ちに疎い傾向があるようです。
そんなお母さんに育てられた子供自身、人の気持ちに対する共感能力が育ちにくい状況となってしまいます。
虐待が世代を超えて行われてしまうと言うのは、このような背景が影響している部分もあるのではないかと思われます。
共感能力が高い人は、教わらなくても自然と子供や他人の気持ちをくみ取る事が出来るものですが、そうではない人も「人がどの様な気持ちになるものか?」を学習する事で、足りない部分を補う事も可能でしょう。
続く
※注意
この様な生育環境で育った人のすべてが愛着障害の様な問題を抱えてしまうわけではありません。
恋愛問題に悩む人のすべての人が、このような生育環境に問題があったわけではありません。
このコラムの執筆専門家
- 堀江 健一
- (東京都 / 恋愛恐怖症・心の問題カウンセラー)
- カウンセリングルーム エンパシィ 代表責任者
何より優しく共感を持って、あなたの味方になります
2021年公認心理師(国家資格)取得13年間で1万人以上の相談実績を基に、深く人を理解し心のもつれた糸を解きほぐします。恋愛が出来ない、自己否定感、人と接するのが怖い、夫婦間の亀裂など、人間関係全般、アスペルガーの方の社会適応などのご相談。
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