平成27年事務年度版金融レポートに見る、個人投資家に適さない金融商品 - 投資相談全般 - 専門家プロファイル

吉野 充巨
オフィスマイエフ・ピー 代表
東京都
ファイナンシャルプランナー

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閲覧数順 2017年08月17日更新

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平成27年事務年度版金融レポートに見る、個人投資家に適さない金融商品

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資産運用の原則 資産配分(アセットアロケーション)

9月に、金融庁から平成27年事業年度版の金融レポートが発表されました。
http://www.fsa.go.jp/news/28/20160915-4/01.pdf
同レポートは日銀の金融政策や銀行等金融機関の経営についての見解を述べるなどに多くを割いていますが、森信親氏が長官に就任されてから、金融庁の立ち位置を顧客(≒個人投資家、生活者)寄りに修正されたことから、我々個人投資家にとって、極めて有益な事柄がレポートされています。
それらを、金融レポートに掲載されているデータとともに紹介いたします。

フィデューシャリー・デューティー


ところで、金融庁森長官は『フィディーシャリー・デューティー』を掲げています。
外来語そのままですので。極めて分かりにくい概念ですが、日本語で言えば、「受託者責任を果たす」、「お客さんのニーズに合った最善の商品やサービスを販売している」、「お客様の信頼にこたえる」などを含む概念です。

詳しくは小生の下記コラムを参照ください。
http://mbp-tokyo.com/officemyfp/column/52685/

個人投資家に関わる事柄は50ページ以降の、国民の安定的な資産形成の推進「貯蓄から資産形成へ」に述べられています。

金融レポートに載っている記事によって、顧客(≒個人投資家、生活者)にとってダメな商品とわかる商品は3つです。
1つは「毎月分配型投資信託」です。

下図は個人投資家のニーズとそれを伝えた時に提案された商品の割合です。
ネット販売以外の金融機関は、どのようなニーズを持っていても、収益分配の頻度の高い商品を提案していることが分かります。
これは、お客のニーズとは関係なく、販売会社が勧めたいものを提案しているのが分かるデータです。

160923顧客の運用目的と販売会社による提案商品(金融庁資料より)

金融レポートの記載にも
顧客の運用方針にかかわらず、販売会社は、主として収益分配頻度の高い商品を提案しているとの結果となった。一般に、利益を分配せずに再投資する方が投資効率は高くなるとされている。当面現金を必要とせずに中長期での資産形成を考えている顧客も含め、一律に収益分配頻度の高い商品を提案する場合が多いということは、販売会社において、必ずしも顧客のニーズに沿った対応がとられていないことの一つの証左ではないかとも考えられる。

銀行や証券の窓口に行って相談しても、個人投資家のニーズに合う商品の紹介は受けられないようです。
また、「利益を分配せずに再投資する方が投資効率は高くなるとされている」とかかれているように、収益を分配してしまう投信の運用成績が劣ることは「投資の原則」として広く認識されています。
そして、 分配金利回りのランキングを公表する等、分配金利回りの高い投資信託が運用成績が良いとの誤解を与えかねない情報提供を行っている事例があることが報告されています。

この「投資の原則等」の認識が広がらないのは、個人投資家にも責任があります。
下図は投資教育を受けた経験が無い人の67%が身に着けたいと思わないのですから、金融機関等の良いようにされても致し方ありません。

160925金融・投資知識習得に関する態度

金融レポートには、たとえば米国と日本の投資信託にかかる費用比較が出ています。

投資信託費用日米比較


160923規模の大きい投資信託の日米比較(金融庁資料より)

米国の大きな投資信託には、日本よりもインデックス・ファンドが多いので費用が安くなる傾向がありますが、圧倒的に米国の投資信託が顧客に対して有利です。日本の投資信託は過去10年、毎年0.11%の損失が出ており、一方米国の投信は5.2%収益を上げています。これらを知らずに、知識がないまま銀行窓口で相談するのはリスクの高い行為です(いわゆる鴨ネギの状態)。
金融庁が指摘しているようにコストが高いアクティブファンドで、{特定の種類の資産、特定の国の資産、特定業種の株式等}を購入することは避けるほうが良いと思います。

個人年金保険(特に外貨建て)


次いで購入を避けるべきは、個人年金保険(外貨建ての物は特に)などの貯蓄性保険商品です。
下図は銀行の販売手数料の推移です。為替リスクはあるが、円建商品よりも高利回りが期待できる(一時払い)外貨建保険が、着実に販売を伸ばしています。

160923販売手数料等の比率推移金融庁資料より)

購入者として、それら商品のリスクを理解して購入しているのか心配です。為替リスクがありますと言われたら、どのくらいの%で、下落率はどの程度かなどを確かめなければなりません。100万円を投資したら、最悪ケースでは損失はどの程度出ますかと聞きましょう。その損失がご自身として納得できるものであれば購入しても宜しいかと思いますが、ただし、窓口の担当者が正しく答えられるかは疑問です。

本件に関しては投資の原則として、比較的単純な商品を個々に提供することで、より低コストで同じ経済効果を得られる選択肢があるにもかかわらず、顧客に対し、そうした情報提供を行わないまま、商品構成が複雑なパッケージ商品を提供し、高い手数料を徴収するといった行為が蔓延している実態が明らかにしています。
例えば、上記のような場合、掛け捨てで生命保険をかけ。豪ドルの国債を購入する、豪ドルMMFを購入するという選択も考えられます。このような簡単な説明もしないまま、高度の仕組みを合わせて、手数料の高い商品が売られています。

商品特性の説明が金融レポート67ページに記載されています。この内容は我々のようなフィーオンリーのアドバイザによく知られている内容ですが、きちんとご認識いただくため。金融レポートの分を引用します。
「貯蓄性保険商品の中でも、近年、運用を定額部分と変額部分に分けた一時払い外貨建保険の販売が伸びている。仕組みとしては、定額部分を外国政府が発行する債券等で運用し、運用期間終了時に、当初払い込んだ(外貨建の)保険料全額を最低保証するとともに、変額部分は元本保証のない投資信託等で運用しており、それに外貨建の死亡保険を組み合わせるといった、内容が複雑なパッケージ型の商品となっている。

一方、このパッケージ商品を構成する外国債券と投資信託、(掛け捨ての)死亡保険を別々に購入・契約することでも、このパッケージ商品と同等の経済効果を得ることができる。例えば、豪州ドル建ての一時払い保険と、それと同程度の経済効果を得られるように豪州国債と低コストの投資信託(あるいはETF)、掛け捨ての死亡保険を組み合わせた場合とで、顧客の支払いコストを比べると、後者の方が10 年で10%程度低くなることがある。また、比較的単純な商品を個々に説明することで、説明の負荷もパッケージ商品より軽くなるものと考えられるが、今回の検証においては、金融機関代理店の中で、このような代替策を提案しているところは見られなかった。

フィディーシャリーデューティーの欠如例


このように、比較的単純な商品を個々に提供することで、より低コストで同じ経済効果を得られる選択肢があるにもかかわらず、顧客に対し、そうした情報提供を行わないまま、商品構成が複雑なパッケージ商品を提供し、高い手数料を徴収するといった行為は、顧客のニーズよりも、販売・製造者側の論理で金融サービスを提供しているのではないかとの見方ができる。」
レポートはここまで踏み込んで、金融機関のフィデューシャリーデューティーの欠如を非難しています。

金融レポートで金融庁は個人投資家に

長期 積み立て 分散投資


長期、積み立て、分散投資を薦めています。この点では、若干条件を加えないと正しい投資法とは言えません。長期投資は必ずしもリスクが低くなるものではありません。ご自身のポートフォリオが十分に分散されていて、且つ定期的なリバランスを実施する前提で長期投資が行われた場合です。また、積立も資産配分が適正に行われたいるポートフォリオの場合に、積立が有効です。1銘柄を積み立てした場合のリスクを考えるとお分かりになるかもしれません。その点で分散は重要です。十分に分散が計られたポートフォリオの想定するものは、日本株であればTOPIXを購入する⇒インデックスの購入になります。


下図は金融レポートに掲載されている長期・積み立て・分散投資の効果のグラフです。
定期預金だけであれば年平均0.1%にしかならず、国内の株と債券に半分ずつ投資した場合は年1.9%です。それが国内・先進国・新興国の株と債券に1/6ずつ投資すると年平均4%で回ったことになっています。
お分かりのように、6資産の投資するという際にはそれぞれのインデックスに投資するとこのような結果が得られたというシミュレーションです。それでも95年から始め、07年~11年に投資をやめざるを得ない場合には、国内だけであれば損失が出ますし、海外でも開始時期によっては損失が出るという良い例になっています。

160923長期・積立・分散投資(金融庁資料より)

長期投資≒リスクが低くなるというものではありません。例えば、レポートにもあるファンドラップのようにコストの高い運用の場合には、長期投資は金融機関が得をするだけになる場合もあります。

次に分散に関してはレポートが述べている内容に賛成です。小生のアドバイスもより広い対象のインデックスへの投資をお勧めしています。それを基に個別の銘柄を加えなければ、十分に分散されたポートフォリオを保有するという大前提が崩れます。

積立は、必ずしも必ず収益を上げるという目的に沿うものではありませんが、例えば価格の上昇と下落が周期的に発生するなどの、ある条件が整ったときに有効な手法です。今回の金融レポートでは非課税期間20年の「積み立てNISA」を対象範囲としているので是とすべき考えています。

このように金融レポートは個人投資家の見方と言えると思います。是非、是非、これからも金融庁にに頑張って頂きたいと願っています。

文責
FP学会会員
独立系顧問料制ファイナンシャル・アドバイザー
オフィス マイ エフ・ピー 代表 吉野 充巨
ファイナンシャルプランニングと投資助言で人生設計から資産形成までサポートする保険や投資信託等金融商品を販売しないフィーオンリーのアメリカ型ファイナンシャル・プランナー≒独立系顧問料制アドバイザー。

【登録】
投資助言・代理業:関東財務局長 (金商) 第2227号
あなたのライフ・プランに適した期待リターンとリスク許容度で資産配分とポートフォリオ構築を口座開設から銘柄選定までサポートします。
注:投資助言に関するリスクの所在は下記に掲載しています。
http://www.officemyfp.com/toushijogentorisk.html

『このコラムは、投資判断の参考となります情報の提供を目的としたものであり、有価証券の取引その他の取引の勧誘を目的としたものではありません。
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