米国:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第2回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
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村田 英幸
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米国:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第2回)

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米国特許判例紹介:特許部品の購入により権利は消尽するか?(第2回) 
〜消尽論に関する最高裁判決〜

   Quanta Computer, Inc., et al.,
   Petitioners,
   v.
   LG Electronics, Inc.

河野特許事務所 執筆者 弁理士 河野英仁 2008年10月3日


(3)Quanta Computerの行為
 Quanta Computer(以下、Q社)はノートPCの受託製造を行う台湾の会社である。Q社はIntelから、MPU及びチップセットを購入しており、また上述した主契約書に記載された「通知」も受け取っていた。それにもかかわらず、Q社は購入したIntel社製MPUに、Intel社製でないメモリ及びバスを組み合わせたコンピュータを製造及び販売した。



図2 Q社製品



図3 純正品

 図2はQ社製品構成を示すブロック図であり、図3はLGEが意図した純正品を示すブロック図である。LGEはIntelへの実施許諾契約に際し、図3に示すIntel製MPUと、Intel製メモリとの組み合わせからなるチップセット(純正品)の製造及び販売を認めた。

 しかしながら、Q社はIntelからIntel製MPUを購入し、図2の如く非Intel製メモリを組み合わせた製品を製造・販売したのである。

 LGEはQ社を特許権侵害として連邦地方裁判所に提起した。LGEは、Q社がIntel製のMPUと、非Intel製のメモリ及びバスとを組み合わせて販売する行為は、特許権の侵害に該当すると主張した。

(4)地裁及びCAFCでの判断
 地裁は、特許部品、すなわちIntel製MPUを、Q社へ販売することにより、完成品である特許権は実質的に消尽すると判断した。
 その一方で、方法クレームについては、特許権は消尽しないと判断した。

 しかし、CAFCは特許部品の販売により実質的に特許権が消尽すると判断した地裁の判断を無効とした。Intel製のMPUに非Intel製のメモリ等を組み合わせた販売は、上述した実施許諾契約には含まれていないことから、特許権は消尽しないと判断した。
 一方、方法クレームについて特許権が消尽しないと判断した地裁の判決を支持した。

 Q社はこれを不服として最高裁へ上告した。

3.CAFCでの争点
方法クレームは消尽しないのか?
 クレームにはシステムクレーム及び装置クレーム以外に、方法クレームが含まれていた。方法特許は常に消尽しないと判断して良いのか否かが問題となった。

特許部品の販売により特許権は消尽するか?
 特許製品を適法に購入した場合、特許権は消尽する。では、特許製品の一部品を適法に購入した場合、特許権は消尽するのか?この点が争点となった。

4.CAFCの判断
(1)方法特許は消尽する
 最高裁は方法を具体化する物品の販売を条件に、方法特許は消尽すると判示した。

 最高裁は、方法を具体化する物品の販売により方法特許が消尽すると判示した過去の判例を挙げると共に、方法特許が全く消尽しないとすれば、消尽による法的な抜け穴が生じると述べた。つまり、方法クレームと装置クレームとは密接な関係を有しており、機能及び作用的には実質的に同一である。消尽を希望しない権利者は、装置クレームに加えて、当該装置の機能を発揮する方法クレームを記載しておくだけで、効果的に消尽論の適用を排除できることになる。

 本事件においても方法特許が消尽しないとするならば、不合理な結果を招くことになる。つまり、IntelはLGE特許に係る完成したコンピュータシステムを販売することを許可されている。しかし、Intelから製品を購入した下流のシステム購入者は、依然として方法特許の侵害の責を追うことになる。

 これでは、
「特許された物品が一度適法に製造・販売された場合、特許権者の利益のために黙示されるその使用に関し、何らの制限もない」
とする長年続いた消尽に関する基本的原則に反することになる。以上のとおり、最高裁は、特許に係る方法を具体化するIntel製MPUの販売があったことから、方法クレームに係る特許は消尽すると判断した。

(第3回に続く)
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