- 小岩 広宣
- 社会保険労務士法人ナデック
- 社会保険労務士
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
この場合、Aさんの有給休暇の日数はどうなるのでしょうか?
有給の日数が増えるとしたら、どういった条件で、どのタイミングで変更されるのでしょうか?
みなさんは、どう思われますか?
結論からいえば、有給休暇の日数や運用については、正社員と派遣社員とで特に異なることはありません。
有給休暇は、継続勤務6ヶ月経過した人に対して、その間の出勤率が8割以上の場合に与えられます。
週所定の労働日数が4日以下の人は、フルタイムの人とは別の有給日数が与えられます。これを比例付与といいます。
Aさんは、いま勤務している営業事務の業務での週の所定労働日数が3日でしたので、6ヶ月経過したときに(8割以上勤務していれば)、5日の有給休暇が発生します(この日数は比例付与の付与日数表によります)。
Aさんがこのまま同じ勤務形態で仕事をしていれば、1年6ヶ月経過時には(8割以上勤務していれば)、6日の有給休暇が与えられます。
今回、フルタイムの仕事に変わるということですので、Aさんには正社員と同じ有給付与日数表に基づいて有給が与えられることになります。1年6ヶ月ですと、11日ということになります。
ここで疑問が出てきます。
ひとつは、短時間勤務の人がフルタイムに変わると、所定労働日数が増えるので有給日数が増えるというのは分かるが、それはいつの時点で日数が増えるのか、ということ。
もうひとつは、いままで営業事務を行なっていた人が営業補助の仕事に職種を変え、新たな雇用契約を交わしたような場合、有給休暇の日数は通算されるのか、ということです。
ひとつめの疑問は、有給発生の基準日において判断するというのが結論です。有給休暇は、6ヶ月継続勤務で所定の要件を満たすことにより発生しますが、この6ヶ月経過日を基準日といいます。この基準日を基点として、以降1年経過ごとに新たな有給休暇が付与されます。
この基準日の時点での所定労働日数によって、判断することになります。
1年6ヶ月経過後の基準日に、Aさんが週所定3日の勤務形態であれば6日、フルタイムであれば11日の有給休暇が、要件を満たすことにより、発生することになります。
つまり、基準日以前にフルタイムへの条件変更が行なわれれば11日、基準日の後にフルタイムになったのであれば、その年に新たに発生する有給休暇は6日ということになります。
ふたつめの疑問については、次の解釈が一般的です。
1 労働契約が存続しているか否かの判断は、実質的に判断する
2 形式上労働関係が終了し、別の契約が成立している場合でも、実質的に継続している場合は継続勤務と判断する
したがって、たとえ契約変更や勤務日数等の条件変更が行なわれたとしても、実質的に勤務が継続している場合は、継続勤務として判断し、有給休暇の付与を行なうことになります。
派遣社員の場合であっても、勤務が継続していれば、正社員と同じように有給休暇は加算されていくわけです。